9月27日の自民党総裁選で、新たな総裁に選出された石破茂氏。今回の総裁選に際して、石破氏は文藝春秋の取材に、自身の政権構想を語っていた。

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石破政権、一番のセールスポイントは?

 ――石破政権になった場合、一番のセールスポイントとなる政策は何でしょうか。

 石破 一番急ぐべきは、防災体制の強化、改善だと思います。地震、津波、洪水、あるいは極度の高温など、災害の発生自体は防げなくとも、その後の被害は努力によって相当に防ぐことができます。その意味で発災後の被害は人災だと考えるべきかもしれません。少なくとも、災害関連死をなくすためには、防災省という専門官庁が必要なのです。

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 先日、台湾で要人との会談を行いましたが、台湾の花蓮の地震では発災から3時間後には避難所が立ち上がりました。台湾の避難所は、衛生的でエアコンの付いたコンテナトイレや、温かくておいしいものが食べられるキッチンカー、プライバシーが確保された、ベッドとテントで仕切られた居住空間が完備されたものです。イタリアでは、こういった設備を約48時間以内に全部そろえる体制をつくっているそうです。こうしたシステムは、一朝一夕にできたものではありません。台湾もイタリアも災害大国であり、まずは国民の生活の質を確保しなければならない、という確固たる理念があって、過去の反省のもとに今日がある。なのに、日本の避難所は関東大震災の時のまま、床に雑魚寝(ざこね)状態です。とても被災者の生活の質を大切に考えているとは言えません。

「金集めには節度を持たねば」と語る石破氏 Ⓒ文藝春秋

 ――防災省の組織構成は、どのようになるのでしょうか。

 石破 内閣府の防災担当部局は、少ない人数で一生懸命に仕事をこなしています。ですが、各省庁から新しい人たちが2年来ては帰りの繰り返しで、一か所に経験と知識を蓄積することができません。専門の職員を集めて教育し訓練して、地方自治体と交流して経験を積むための組織が必要です。今、災害対策関係の予算を一括して要求する役所がないので、災害のたびに、補正予算、予備費を要求して、その場しのぎで対応していますが、災害対処に精一杯で、予防、備蓄、訓練、あるいは研究開発はできない。だから、専門の防災官庁は絶対に必要なのです。

 現在の災害対策基本法では、災害対処の基本は基礎自治体が担うことになっています。しかし1718市町村、それぞれ財政力も人的資源も経験値もバラバラですから、能登半島のように財政難のところは今なお厳しい状況を強いられる。全国どこでも同じ災害対応ができないままでいいとは私には思えません。これもまた、防災省の主眼の一つだと思います。

日米地位協定見直しの前に

 ――来年には新しいアメリカ大統領に代わります。日米関係についてのお考えは。

 石破 アメリカが居ないと日本は何もできないと言うけれども、アメリカだって日本が居ないと世界戦略は成り立たないわけですよね。日本にある基地は前線基地ではない。補給をし、修理をする根拠地なんです。そして、在日米軍を守っているのは事実上、自衛隊です。こういった日本が果たしている役割がありますが、米政権も知らないことがいっぱいあるか、もしくは、日本が指摘しないのをいいことに、日本の努力にただ乗りしている部分がある。そういった現状を明示したうえで、議論のスタートを公平にするべきです。