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「なめている」のか?

「日本なめんなよマジで」。前澤氏は4月16日、X上でメタへの怒りをこうぶつけていた。ネット上の反応などからは、多くの人が共感しているようにもみえる。

 メタは日本をなめているのだろうか。筆者は必ずしもそうは思わない。単に、営利企業に対してコストのかかる作業を行わせるだけの法制度が、日本に存在しないだけである。

 メタは現在、コンテンツモデレーションの99%以上をAIに委ねていると説明している。AIによる自動審査の精度は十分ではないため、最終的にその国の言語や文化、社会状況を把握する人間が目を通さなければ、対応漏れや過剰な削除は当然に起きるだろう。人間を雇えばコストは膨らむ。それでも、そのコストをかけなかった場合、巨額の制裁金を科されるなど、より大きなコストの発生が予想され、それが得られる利益を上回ると判断すれば、企業は対応するはずだ。

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 メタが、日本では開示しない言語ごとの対応人数をEUでは開示するのは、EUにデジタルサービス法(DSA=Digital Services Act)という強力な法律が存在するからだ。オンライン上の情報空間の安全とユーザー保護を目的に、PF事業者らに偽・誤情報や違法なヘイトスピーチなどのコンテンツについての一定の対応を義務付けるものだ。そして違反した場合は最大で全世界前年売上の6%の制裁金が科せられる。メタの2023年の世界総売上は1349億ドル。仮に6%の制裁金が科されるとすれば、今のレートだと日本円にして1兆2000億円になる。

 DSAは今年2月に全面適用されたばかりだが、欧州委員会は早くも4月30日、メタに対してDSA違反の疑いで調査を始めたと発表している。違反が疑われる行為の中には、日本と同様、詐欺広告に対する対応不備も含まれているという。メタは期限付きで報告を求められており、その回答が不十分であれば制裁金が科される可能性がある。

読売新聞編集委員の若江雅子氏

 日本では現在、冒頭の総務省の検討会でDSAに相当する法制度整備について議論している途中で、偽・誤情報や偽広告のモデレーションに関するPF規制は現時点では存在しない。今年5月に公布された「情報流通プラットフォーム対処法(改正プロバイダ責任制限法)」は、権利侵害情報については削除申請に対し一定期間内に判断し、結果を通知する義務など(迅速化規律)を定めているが、詐欺広告は違法情報に位置付けられていないため、この対象にはならないだろう(前澤氏のように写真を使われたケースは肖像権侵害に当たるので対象)。したがって、対応コストが非対応コストを上回ることが明らかな状況下で、対応しないというメタの選択は企業としてはある意味合理的なのである。

 なりすまし広告については著名人が声を上げたため注目されたが、PFの台頭で日本の利用者に不利益が生じているのにいつまでも手当てされない、ということは今回に限ったことではない。ただ、それらは日本政府の規制に対する慎重な姿勢に起因するのではないかというのが、PF問題を取材してきた筆者の問題意識である。さらに、規制の強化に強く反対しているのが日本の事業者であることも珍しくなく、結果として本来なら競争相手のはずの海外PF事業者を守っているのではないか、と思うこともしばしばである。

本記事の全文は、「文藝春秋」2024年10月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています(若江雅子「日本はGAFAに甘すぎる」)。

 

全文では、下記の内容について詳細に伝えています。

・端末等識別子を使ったデータ収集の問題

・サードパーティに縋る日本の業者

・機能していない制裁

・課徴金制度に反対する国内事業者

・EUの「対PF戦略」