昼下がりのファミレス、深夜のファストフード店、喫茶店や電車の中、駅のホーム……誰もが耳にしたことがある「隣のヤツらの、めちゃくちゃつまらない会話」=「面白くない話」。それを10年間、集め続けたのが「面白くない話マニア」の伊藤竣泰氏である。そんな氏が活動初期の学生時代に直面した「美術予備校での面白くない話」とは? 新刊『面白くない話事典』(飛鳥新社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©getty

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 2010年9月某日、午後1時頃。愛知県内某所にある美術予備校の教室にて。10代後半~20歳前後の男性3人(含む私)、女性4人の7人である。私が当時、大学受験のために通っていた、美大を目指す学生のための予備校で起きた、収集ごく初期の惨劇である。

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美術予備校の「面白くない話」

男性A「いやっ、さすがにエンターテイナーのオレでもお姉様(注:実の姉)に怒られちゃうから」

女性A「え? お姉さん優しいんじゃないの?」

男性A「いやっ、基本は女神なんだけど、母上(注:実の母)含めそういうの厳しいんだよね」

女性B「普段優しいから、お姉さん怒ると怖そうだね(笑)」

男性A「いやっ、怒られる前に“ぶってください!”って土下座してるからさ、いつも!」

女性C「家族に“ぶってください”とかあるの?(笑) ヤバ(笑)。さすがエンターテイナー(笑)」

男性A「いやっ、オレ普段こうでも、実家ではいつも踏まれてるから! いつも!」

女性D「でもエンターテイナーなんでしょ? 行動制限されてちゃダメなんじゃないの?(笑)」

男性A「そういう意味で1人暮らしの城(注:アパート)に逃げてきたワケよ」

男性B「城案内してよ、みんなで行こうぜ~」

男性A「おぅいいよ。今、ロフトとか改造してガチ秘密基地にしてるから! ヤバイよ?」

(講師が教室に入ってくる)

講師「おい鈴木、誕生日だったろ? 大したものじゃないけど、はい、プレゼント」

男性A「マジすか! ありがとうございますっ。開けていいすか? 何だろう……?」

(構成作家向けのユーモアについて書かれた書籍が出てくる)」

男性A「えぇ!? コレ、先生マジすか! オレにコレ!? マジで言ってます?」

講師「いや本屋で見かけて、すぐ鈴木のことが浮かんでさ」

男性A「うわ、オレ、今マジで嬉しいです、ヤバい、エンターテイナーやってて良かった……!(鈴木、嬉しさのあまり講師に抱きつこうとする。涙目になり手で拭う)」