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――みずから壁を設定して、それを乗り越えようとした、というわけではないですか?

奈緒 壁というイメージはあまりなくて、本当に不思議と、いま私はこれに向き合わなければいけないと思う題材に出合えてきたんです。私のなかでも「これだ」というひらめきがあって。そういうご縁を大切にしてやらせていただいています。

いまの私だからこそ演じられた

――『傲慢と善良』もいま向き合うべきだと思った作品ですか?

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奈緒 もともと辻村深月さんの小説が好きだったので、その実写化作品に出ることが夢だったんです。ただ辻村さんの小説を読みはじめたころの、10代の自分が『傲慢と善良』を演じられるかといえば、やっぱり題材的にできなかった。結婚する友だちも出てきて、自分の将来と自然と向き合わなければいけなくなったいまの私だからこそ、お話をいただいたときにやりたいと思いました。

 

第4の自分

――萩原監督と話し合いをしながら、役柄の準備を進めたということですが、具体的にお聞きするとしたら?

奈緒 たとえば「ジョハリの窓」かな。それは人物を4つの窓に分類して理解する方法なんです。「第1の窓」は自分も他人も知っている自己の姿。「第2の窓」は自分だけが知っていて、他人にはまだ知られていない自己。「第3の窓」は自分では気づいていないけど、他人が知っている自己。そして「第4の窓」がまだ誰にも知られていない自己です。

 

 その4つの窓に、今回演じた真実について、それぞれ書き込んでいったんですよね。真実ってまわりにはこう見られるけど、実際はこういう部分があるかもな、というふうに。最終的に、映画を通して第4の真実が見つかるといいですね、というお話を萩原さんとしました。周囲の人たちも真実自身も知らなかった第4の自分に、ラストで気づけるお話になるといいなと思っていたんです。

――いまのお話を聞いて納得できました。というのも、今回の奈緒さんの演技を観ていて、役柄への理解だけでなく、理解できない部分も同時に呑み込もうとしなければ、これだけ奥行きのある演技にはならないと思ったからです。そうやって「見つける」作業をしていたんですね。