公開中の主演映画『傲慢と善良』でも抑制のきいた演技で観客を魅了する奈緒には、転機となった作品があるという。その作品と共に、今最も注目を集める女優が自身のキャリアを振り返った。(全2回の前編/後編を読む)

 

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結局は考え方ひとつかなって。

――これまでのキャリアは順調でしたか?

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奈緒 はい、思っていた以上に。もちろん自分では想像もしない壁と出合って、乗り越えていかなければならない瞬間はたくさんありましたけど、俯瞰して引いて見たときには順調に歩ませていただいていると思います。

――順調だとはっきり言えるのは素敵なことですよね。

奈緒 最近、なにをもって仕事が順調かということをすごく考えるんです。でも、たとえきついことがあっても、結局は考え方ひとつかなって。いま順調だと思えば、そのとき困難だったことも成長するうえで必要なことだったと思える気がするんですね。そう考えられるようになったこと自体が、順調に歩めている証なのかなと最近は思っています。

 

とにかくやりたいと思う自分を信じたい。

――18歳のとき、地元・福岡で演技のワークショップに参加し、芝居に興味を持ったことがキャリアの起点だと思います。そのころは将来の自分の姿をどうイメージしていましたか?

奈緒 そのころは本当にいろいろな夢がありましたけど、ただただ映画をすごく好きになって、映画に出ることが大きな目標だったので、キャリアの初めのころの夢はスクリーンのなかにあったと思います。

――20歳のときにお母さまの反対に遭いながら上京されたんですよね。親に抗ってまで、なぜ上京したかったんですか?

奈緒 お芝居を真剣にやりたいという気持ちが強かったんです。これ以上にやりたいと思えるものには二度と出合えないかもしれないと感じていたので、あのとき初めて強い気持ちで自分の進路を決めました。たくさんある選択肢のなかから自己決定をした最初の記憶です。とにかくやりたいと思う自分を信じたい。そういう気持ちがありました。