NHKドラマ10『宙わたる教室』の放送が始まった。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の屋内シーン、主人公の藤竹叶(窪田正孝)の登場、そして可愛らしいイラストのオープニングへ――目と心を釘付けにする45分間を、原作者・伊与原新さんはどう観たのだろうか。初回試写の記者会見の日にお話をうかがった。
――ドラマ第一話をご覧になってのご感想をお聞かせください。
伊与原 脚本は拝読していたものの、映像として拝見して、僕の想像を遥かに超える世界が広がっていて、素晴らしかったです。
冒頭のJAXA内部のシーンで、火星探査車オポチュニティの模型が映っていくところで、すでに泣きそうでした(笑)。あと、夜の定時制高校で「青空実験」をする場面、「きれいに撮れているなあ」と感動しました。この回に限らず、小説中の実験シーンの再現には、制作の方々が非常にご苦労されたと聞いています。
――主演の窪田正孝さんの演技はいかがご覧になりましたか。
伊与原 窪田さんは、「変わり者の教師」である藤竹、「周囲の空気を読まずに真っ直ぐに突き進んでいく研究者っぽい先生」を見事に演じられていたと思います。
――小林虎之介さんも、今回、なにかと窪田さんに食って掛かり、強烈な印象を与えますね。
伊与原 その年齢の時に高校で学ぶことが出来ず、定時制で学び直しを始めたけれど思うようにいかずに苛立つ青年・柳田岳人の熱さ、悲しみ、悔しさを、本当にストレートに表現されていて、僕の小説の岳人以上の岳人になっていました。
――今回のひとつのテーマ「発達性ディスレクシア(学習障害のひとつ。読み書きに困難がある)」ですが、今回、ドラマをご覧になって、思考力も暗記力も計算力もあるのに、文字を認識する機能の問題のせいで、学校のテストで低い点しかとれず、「学力不振」に悩み続ける人たちがいる、ということを多くの視聴者の方々が知ってくださるかもしれないですね。
伊与原 小説を書いた時も、よくぞ「ディスレクシア」を取り上げてくれた、と言われることが多かったです。
藤竹が、岳人の数学の答案から「この生徒が出来ないのには、『やる気』の問題以外の、何か合理的な理由があるのではないか」と推理するところ、あれは、まさに研究者の態度なんです。小さな違和感をおろそかにせず、生徒のかかえる問題を見逃すまいとするところが、いかにも研究者らしい教師で、生徒ひとりひとりのことをよく見ているんです。
――次回からの、越川アンジェラ(ガウ)、名取佳純(伊東蒼)、長嶺省造(イッセー尾形)たち、癖のある生徒らの巻き起こす騒動も楽しみです。
伊与原 脚本の澤井香織さんは、大枠で僕の原作小説をとても大切にしてくださりつつ、ドラマならではのオリジナルエピソードや、小説では「端役」だった人たちの人生を膨らませてくれています。原作者としても、これからの放送が、毎回、楽しみです。
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NHKドラマ10 「宙わたる教室」
●放送予定
2024年10月8日(火)スタート〈全10回〉
NHK総合 毎週火曜 夜10:00~10:45
BSP4K 毎週火曜 午後6:15~7:00
●原作
伊与原新 『宙わたる教室』
●脚本
澤井香織
●出演
窪田正孝
小林虎之介 伊東蒼 ガウ
田中哲司 木村文乃
中村蒼 イッセー尾形 ほか
●ドラマ公式HP
https://www.nhk.jp/p/ts/11GMGMRG5V/