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偶発的な個別事件と片付けてはならない

 事件直後から、中国政府は「偶発的な個別事件だ」として対応してきました。ただ、深圳だけではなく、今年6月には蘇州で日本人学校のスクールバスが刃物を持った男に襲われ、制止に入った中国人女性スタッフが亡くなる事件も発生しました。外交部スポークスマンは「いかなる国でも起きる可能性がある」と発言しましたが、わずか3カ月の間に日本人学校関係者が狙われるという事件が2回も発生するような国は、世界広しといえども、一体どこにあるのでしょうか。決して、偶発的かつ個別の犯行と片付けてはなりません。

 私は数年前から、こうした事件がいつ起きてもおかしくない状況にあったと考えています。私が大使を務めていた2021年9月、ちょうど深圳日本人学校の事件が起こる3年前のことであります。今回の事件につながる危険な兆候がありました。

深圳日本人学校が入居するビル 🄫時事通信社

 事の発端は、柳条湖事件から90年の節目となる2021年9月18日の直前でした。中国のインターネット上で、日本人学校に対する誹謗中傷の書き込みや動画が急増したのです。日中戦争に言及したうえで、「前科のある日本がこんなに多くの学校を中国に建てており、警戒しなければならない」、「誰が日本人学校の建設を許したんだ」などと非難する内容でした。当時、香港を含め13校の日本人学校が「35カ所ある」とするなど、事実関係が誤っている投稿がほとんどでした。また、「中国人は入学できない」と批判する書き込みもありましたが、それは中国国内の法律で定められていることでもあります。

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 こうした悪意や誤解に満ちた書き込みを受け、中国各地にある日本人学校にはいたずら電話や無言電話等が鳴り始めました。この状況に、北京の日本人学校は保護者に対して、「危機感を持ち、児童生徒の安全のため警戒体制を敷いて対応する」という内容の通知を行いました。

 本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「〈前駐中国大使が警鐘〉中国の日本人学校が警戒すべき3つの記念日」)。

 全文では、下記の内容について詳しく説明しています。
・大使直轄特命チームを創設秘話
・深圳の事件は「いつでも起こり得る状況」だった
・中国公安部が徹底警備した
・反日動画は一時的に消えても安心できない
・日本側も情報発信をすべし
・二度と事件を起こさないための環境整備

文藝春秋

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