東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏、朝日新聞記者の太田啓之氏が「文藝春秋 電子版」のオンライン番組に出演、司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」を“ミリオタ目線”で分析、マニアックに解説した。
作家・司馬遼太郎が10年の歳月をかけて執筆し、代表作となった長編小説『坂の上の雲』。日本陸軍における騎兵部隊の創設者である秋山好古、その弟で海軍における海戦戦術の創案者である秋山真之、真之の親友で明治の文学史を代表する俳人・正岡子規の3人を主人公に、明治維新から日露戦争に至るまでの日本を生きた人々を描く本作。NHKでドラマ化もされ、現在再放送が行われている。
この作品を、二人はどのように読むのか。まず話題になったのは、司馬の執筆力の高さだ。
「日露戦争も単に戦史として読むと無味乾燥じゃないですか。でも司馬さんの作品を読んでいると、非常に明快にわかる。並々ならぬ本質把握力と、情感たっぷりに描く能力が怖いって改めて思います」(太田氏)
また、好きな登場人物をめぐる話題になり、小泉氏は正岡子規を挙げた。
「僕は秋山兄弟のように戦争の英雄にはなれないという気持ちがある。正岡子規は日清戦争に記者として従軍したいと望みますが、病弱だったためになかなか叶わず、ようやく派遣されたと思ったらすぐに終戦を迎える。しかもその帰途で大喀血して、そのまま死に向かう。戦争への関わり方としては子規側だなと思いました」