センスの哲学』が話題の哲学者・千葉雅也さん。「センス」や「芸術」、あるいは「芸術と生活」について、読者の疑問に応える連載「センスにまつわる質問箱」第9回の本日は、“無難なファッション”から抜け出したい24歳からの質問に答えます。

『センスの哲学』(千葉雅也 著)

【vol.9 “無難な服装”から脱却するには?】
 服を買いたいのですが、何を選べばいいかわかりません。若者らしく生きたいからお洒落をしてみたい、というだけで、まだ理想像がない時点で服を着るセンスはありますか。無難な服ばかり選んでしまうところから脱却したいです(サッジテール、大阪府、大学院生・大学生、24歳)。

千葉さんのお答え まずは魅力的なアイテムを見つけるところから

 無難な服だっていいんですよね。無難な服だとセンスがないというわけではない。ただ、どういう服を着るかというのは、どういう文化圏にいるかと結びついています。スポーティーだったり、不良的だったり、文化系的だったり……などなどの文脈があるなかで、自分はそういった文脈にどんな思いを持っているのかを考えてみる。その文脈をひっくり返したり、ちょっと他の文脈とミックスしてみたりという遊びに興味を持つかどうか。私服は原則として自由に着ることができるわけですが、衣服というものは、何らかの社会的意味を持ってしまう。「人が服に何かを見ようとすることを乱反射させる」のが、ファッションあるいはコーディネイトの楽しみだと思っています。

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 それは複雑なことだとしても、まず手始めに、何か魅力的なアイテムを見つけるところからでもいいでしょう。このジャケットが好きだからこれをどう着るか。あるいは、普段行かないお店を覗いてみて「こんな面白いデザインがあるんだ」という出会いから始めてみる。