そして諮問委員会は、女子医大の再生を担う重要な理事長に、福井次矢氏を強く推す。産科のブランド病院として知られる、聖路加国際病院(東京・中央区)の理事長や院長を務めた福井氏だが、部下の医師からパワハラ行為で訴えられ、経営手腕にも疑問符が付いていた人物だという情報を、女子医大の教授たちが掴んだという。
「有志の教授2人が諮問委員会の岩田委員長に会って、聖路加国際病院での福井氏の経営手腕が問題視されたこと、パワハラを受けたとして部下の医師から訴えられたこと等を伝えたそうです。厳しい状況にある女子医大の理事長として適格なのか教授が尋ねると、岩田委員長はしどろもどろだった、と聞きました」(女子医大の現役職員)
こうして諮問委員会は理事長人事を白紙にせざるを得なかった。福井氏は女子医大の理事に選ばれていたが、理事長の可能性がなくなり、10月23日に理事も辞退していたことも判った。
兼務案が出たのは臨時理事会の当日
一方、すでに学長に選ばれていた山中氏は、1980年に三重大学医学部を卒業。1983年から2019年まで女子医大に勤務して、膠原病リウマチ痛風センターの教授として診療と教育、研究に取り組み、リウマチの権威としても知られる。
現在は、国際医療福祉大学の教授と同時に、山王メディカルセンターの院長も務めている。
山中氏に学長と理事長の兼務、という案が示されたのは、臨時理事会の当日だったという。
「これだけ社会的に批判されている中で必死に頑張っている教職員がいる。私は感謝、敬意、そして感動しました。皆さんをなんとか守りたい、と思っている」
職員を集めた所信表明で、山中理事長は熱く語った。
山中氏に対しては、女子医大の職員から歓迎する声が聞こえてくる。
「学生時代に山中先生の講義を受けたことがありますので、よく知っています。患者さんの信頼が非常に厚い医師でした。泥舟状態の女子医大に戻ってくれて嬉しかったです」(女子医大OGの医師)
「穏やかで優しい人柄で、在任中は若い医師や看護師からも慕われていました」(女子医大の男性医師)
前体制の理事や監事、評議員は全て辞職して、経営陣は刷新された。女子医大はギリギリのところで、女帝の亡霊を振り払い、自立的に再生に向けたスタートを切ったと言えるだろう。
元理事長の岩本氏は、警視庁の事情聴取を連日のように受け、Xデーも近いとも言われている。
一連の疑惑について、内部告発した2名の職員は懲戒解雇され、退職金も支払われていない。第三者委員会はこれを「報復的な人事」として、厳しく批判している。再生に向けて始動した女子医大は、2名に対して謝罪や被害回復を早急に進めるべきではないだろうか?
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