7日に開かれた東京女子医科大学の臨時理事会で、岩本絹子氏(77)が理事長を解任された。最後まで辞任を拒否した女帝は、約5億円かけて改装した理事長室の立ち入りを禁じられ、“赤い巨塔”から追放されたのである。

 関係者によると、一連の不正行為で巨額の損失を受けた女子医大は、損害賠償請求と被害届を出す検討に入るという。

「ターニングポイントは文春報道。不正なカネの具体的な疑義を示しているのに客観的な調査をせず、疑いの当事者である理事長・岩本絹子氏らの主張を、大学の言い分として教職員、保護者、文科省に説明した。これはとんでもないこと」

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 一連の疑惑やガバナンスの調査を行った、第三者委員会の竹内朗弁護士はこう指摘した。高度医療に定評があった女子医大病院を、徹底的に破壊した女帝とは、何者だったのか?

 そして、不正の内部告発を生かさなかった人物の告白とは──。

家宅捜索中に自宅を出る岩本氏(3月29日)

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女帝を退任に追い込んだ第三者委員会の報告書

 現在77歳の岩本氏は、1973年に東京女子医大を卒業。8年後、東京・江戸川区で同級生A氏と共同で産婦人科医院を開業した。

 今年3月29日、警視庁捜査二課が特別背任容疑で、岩本氏の自宅など関係先に一斉家宅捜索を行なった。家宅捜索が続く午後6時30分頃、黒のワゴン車に小柄な女性が乗り込んだ。フードを目深に下ろして顔は見えない。

 待機していた報道カメラマンたちが、一斉にワゴン車に駆け寄って取り囲む。女性はフードを少し上げ、窓ガラスに並んだカメラのレンズを見回した。メガネの奥に光る、ギョロリとした大きな目。東京女子医大の女帝といわれる、岩本氏だった。

 文部科学省はこの家宅捜索を重視して、一連の不正行為やガバナンスについて、独立した調査を行う第三者委員会の設置を東京女子医大に指導する。

 第三者委員会には、去年まで検察ナンバー2だった山上秀明弁護士ら4人が選任された。これに合計20人の弁護士と、58人の公認会計士などが加わり、4月10日から女子医大関係者や取引先などの調査を開始。岩本氏のヒヤリングは延べ5回にわたったという。

 そして8月2日、全247ページの調査報告書を公表、岩本氏を中心にした、不正な資金の流れを解明して、その責任を厳しく指摘した。

第三者委員会の記者会見(8月2日、東京女子医大・弥生記念講堂)
公表された調査報告書は全247ページ

「岩本氏は、副理事長となって経営統括理事となったその瞬間から、資金の不正支出・利益相反行為の疑義を生ぜしめる行為に手を染めていたことになる。(中略)金銭に対する強い執着心と、本法人に対する忠実性の欠如を見て取ることができる」(調査報告書P236)