イバラの道の先にある東京女子医大の未来
第三者委員会の報告書の中には、呆れるようなことも記載されていた。
岩本氏は、至誠会の会長を去年解任されるまで、自らに対して至誠会から中元と歳暮として3万円分の商品券を贈らせていたのである。
コロナ禍だった2020年の夏、女子医大は職員のボーナスカットを宣言して、社会の大きな批判を浴びた。その後、ボーナス支給に方針を転換したが、前年のほぼ半分の1ヶ月分でしかない。
女子医大の教職員は、この10年ほど給与のベースアップはほとんどない。しかし、今回の調査で岩本氏の報酬だけは、2015年当時の約1800万円から、2023年に約3200万円と72%も増加させていたことが分かった。岩本氏の報酬額を上げたのは「本人の判断」と関係者は証言している。
また、報告書にはこんな記述もある。
「(岩本氏は)自身の考えとは異なる意見を述べる者に対しては、自身の権力基盤を脅かす存在として敵視し、組織から排除することを繰り返し行った。それまでどんなに気心が知れている間柄であっても、一度異論を述べた者を突如として敵視し、(中略)報復と疑われる不適切な人事措置を講じてまで、組織から排除した」(調査報告書P236)
週刊文春が2022年に報道した“疑惑のカネ”をめぐって、取材に協力したとして2人の事務職員が、この報復的な人事措置によって懲戒解雇の処分を受けた。同様に合理性を欠いた理由で懲戒処分を連発することで、岩本氏は恐怖政治による支配を続けてきたのである。
私たちが長期間にわたって「東京女子医大の闇」の連載を続け、女帝らの問題を追及してきたのは、この大学病院を必要とする患者が数多く存在するからだ。高度医療は一朝一夕に実現しない。
そして惨憺たる診療現場に踏みとどまり、患者を守り続けている医療スタッフがいる以上、スラップ訴訟を受けても引き下がるつもりはなかった。
女帝が退場しても、医療スタッフの確保や財政の立て直しなど、女子医大にはイバラの道が続く。
これから先も、私たちはしっかり見守り続けるつもりだ。
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