「給与の二重払い」と特別背任容疑
至誠会の出向契約は、2020年1月に元宝塚トップスター・彩輝なお氏の親族が経営するケネス&セルジオ社との業務委託契約に切り替えられた。岩本氏は無名時代から彩輝氏の大ファンで、理事長就任のパーティでは花束の贈呈を受けている間柄である。
女子医大との業務委託契約は月額350万円。そのうち側近Xは月額給与200万円、側近Yは50万円、その他にXらの飲食等にケネス社名義のクレジットカードで月額70万円が用意された。マージンとしてケネス社に支払われたのは、月額30万円のみ。
その後、岩本氏の専属運転手である甥の人件費として、女子医大は月額60万円を同社に追加で支払っていた。費用総額は3年間で1億円超。週刊文春が「利益相反の疑いがある」として報道すると、ケネス社の意向で業務委託契約はすぐに解除された。(※すべて税別の金額)
文春報道を受けて、女子医大は文科省に対し、「助言を受けた実績があることを踏まえ、ケネス社を選定した」などと報告していた。しかし、同社と女子医大にそれまで取引実績はなく、“虚偽報告”だったと第三者委員会は指摘、側近XとYが、同社と至誠会から同時に給与を得ていたことは、「給与の二重払い」だと認定した。警視庁が捜査している、特別背任容疑が成立する可能性が高い。
また、岩本氏が経営していた産婦人科病院の女性従業員Z(報告書ではO)が、業務実態のないダミー会社の社長を務め、女子医大の受注業者からキックバックを受けた疑惑もある。(週刊文春電子版オリジナル「疑惑のダミー会社と女帝をつなぐ『第三の女』と白ベンツ」)
岩本氏が女子医大の実権を握った2015年から、大型施設のスクラップ&ビルドが相次いだ。
その際、側近Xが解体業者や不動産会社、設計事務所などに働きかけ、Zのダミー会社と多額のコンサルタント契約を結ばせていた。解体業者との契約だけでも1億円を超す。
この疑惑について、第三者委員会は厳しく批判した。
「E氏(側近X)の行為は、職務上の地位を悪用して狡猾。 岩本氏はヒアリングにおいて『知らなかった』旨を述べたが、一連の還流に岩本氏が全く関与していなかったとは認めがたく、仮に岩本氏が知らなかったとしても、経営統括理事であった岩本氏には重大な管理責任が認められる」(調査報告書P76より要約)