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封印された内部告発

 私立学校法では、「監事」に学校法人のガバナンスを監視する責任を定めている。実は2019年に、当時の評議員だった女子医大OGが、前述した出向職員の架空請求疑惑について、監事の一人に内部告発をしていたことが、取材で新たに判明した。

「至誠会の職員から『出向職員として自分の名前が使われている』という相談を受けました。それで2019年7月25日に、新宿のホテルのラウンジで監事の1人と会い、架空請求が行われている可能性が高いと話して、調査を依頼しました。

 しかし何も調査はされず、監事からは『私たちがすべきことは冷静に岩本先生を支えることです。メールはこれを最後にさせていただきます』というメッセージが届きました。その時に内部告発は揉み消された、と思いました」(元評議員の医師)

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 この監事は、岩本氏と女子医大の同級生で、現在は同大の名誉教授の肩書を持つ。

 2019年に内部告発を受けた時、どのように対応したのか、話を聞いた。

「その頃、新宿のバーで会ってお話しはしました。ただ、内部告発と言える内容だったか……。申し訳ありませんが、はっきり覚えていません」

───その頃は、岩本氏を信じていた?

「私は同級生として、彼女を守るつもりでいたので、絶対的に信頼していたんです。吉岡家(創立者一族)でもあるし。岩本さんの悪口を聞くと、『いや、彼女はそんな人じゃないから。本当はいい人だよ、優しい人だよ』と庇っていました」

女子医大を創立した吉岡彌生(東京女子医科大学120周年記念誌)

――創立者一族だから特別扱い?

「そうです。彼女は学生の頃から、自分は吉岡家だというプライドがあって、『私は吉岡家だから、この大学を守っていく義務がある』みたいな感じで言っていました」

──他に内部告発は?

「文書が届きましたが、信じられなかったんです。まさかと思って。それをY(岩本氏の側近)に『書いてあることは本当?』と言って渡したら、調べてみますと。そして『全部嘘でした』という返事をくれました。今思うと、犯人に証拠を渡したようなものです」

――調査報告書を読んでどう感じた?

「監事として責任を非常に感じています。ただ、知る術がないわけです。彼女は裏で全部やっていたわけだし、もちろん理事会にも出さない。(疑惑のカネは)文春の記事で分かったくらいです。本当にびっくりしましたけど」

 岩本氏に対する内部告発を側近に渡せば、どのような結果になるのか、予想はつくはずだ。同級生や創立者一族という理由で「守る」というのであれば、監事としての職責を放棄していたことに等しい。