医療ミスで患者が死亡した、東京女子医科大学病院(東京・新宿区)のICUについて、「医師の勤務記録に不備がある」と、厚生労働省の立ち入り調査で指摘されたことが分かった。
“ICUの管理日誌に、医師が何時から勤務しているかの記載が抜けている”、“管理日誌がなかった日もある”など、定められた記録がなく、診療報酬の不正請求にあたる可能性が高いという。患者の命を守る“最後の砦”であるICUの杜撰な管理実態を追及する。
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東京では珍しく氷点下まで冷え込んだ、1月30日の朝。女子医大病院・総合外来センターの正面玄関前に、地味なコート姿の男たちが次々と現れた。患者やその家族とは異なる、厳しい雰囲気を漂わせ、交わす言葉も少ない。5人ほど集まると、首に身分証をかけた病院職員が、正面玄関を避けるように裏手の通用門に彼らを誘導していく。すると、また同じような外見の5人が集まってきた。今度は女性の姿も混じっている。患者に対する配慮か、それとも取材を意識しているのか、分散して集合する手順だったらしい。
このようにして女子医大病院に入った約17人は、厚労省で医療機関の監査などを行う、関東信越厚生局の調査官だった。
去年12月、女子医大病院で発生した「ICUの死亡事故」(#10を読む)を、文春オンラインがスクープした1週間後、女子医大の岩本絹子理事長宛に、関東信越厚生局長から「個別指導」と「適時調査」を行う通告書が届いていたのである。
「個別指導と適時調査が、同時に行われるのは異例」
個別指導とは、厚生局が指定した患者に関して、カルテや看護記録、処方箋、領収書などの記録を全て提出させて調べ、不備があったら指導を行う。今回は30人の患者が指定された。
一方、適時調査は、病院が施設基準として定められた“要件”を満たしているかを確認するものだ。
いずれも保険診療が適切に行われているか、厳しく調査するのが目的である。今回、厚生局の姿勢はこれまでとは明らかに違っていた、と女子医大関係者は話す。
「個別指導と適時調査が、同時に行われるのは異例です。過去20年間で記憶にありません。厚生局からの通知が届いたのが、文春オンラインでICU死亡事故が報道された1週間後ですから、当然、ICUが徹底的に厳しく調査されるだろうと予感しました」