警視庁捜査2課が、東京女子医科大学の岩本絹子理事長をめぐる「疑惑のカネ」を捜査しているなか、新たに「第4の疑惑」が浮上した。
附属病院の移転で荒川区に土地を売却した際、不動産会社に約1600万円の仲介手数料が支払われたが、その不動産会社は本来の仲介業務をしておらず、女子医大と不動産会社ぐるみの“偽装仲介”の可能性があるのだ。
経営の迷走によって深刻な医療崩壊に直面している女子医大の裏で、密かに行われていた土地取引の「闇」を追った──。
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「第4の疑惑」の舞台は東医療センター「博友寮」の跡地
隅田川のほとりにある荒川区立宮前公園には、巨大な送電塔がそびえ立ち、高原のような庭園にワイルドフラワーが咲き乱れている。「第4の疑惑」の舞台は、この不思議な光景が広がる場所に5年前まで建っていた、女子医大・東医療センターの「博友寮(はくゆうりょう)」である。
東京の医療過疎地と言われる荒川区で唯一の基幹病院が、女子医大の附属病院である東医療センターだった。「博友寮」は、その東医療センターで働く職員のため、1971年に建てられた。鉄筋コンクリート4階建で40室あり、以前は全国から集まった研修医などで満室だったが、老朽化が進むにつれて、大半が空室の状態になっていた。
2018年3月、東医療センターの足立区移転に伴い、「博友寮」は解体後更地にすることが、女子医大の理事会で承認された。申請したのは、副理事長(当時)として経営の実権を握っていた、岩本絹子氏である。
仲介業者の記載がない「手数料約1600万円」の稟議書
同年11月、岩本氏は「博友寮跡地」の1376㎡を、荒川区に約5億円で売却する計画について、再び理事会に申請して承認された。この時の稟議書(申請日2018年11月13日)を入手したところ、仲介手数料(*稟議書では売買手数料)として、約1600万円が計上されていたが、仲介業者の名はどこにもない。
今回、女子医大に質問状を送付したところ、仲介業者との契約締結は「2018年4月ころ」と回答した。そうであれば、この稟議書に仲介業者を記載することは可能だったことになる。だが、仲介業者の名前が明かされたのは、翌2019年4月に岩本氏が理事長に就任した後、仲介手数料の約1600万円の支払いを申請した稟議書だった。
この時の事情を知る、女子医大関係者はこう証言する。
「当時、岩本先生は別の不動産売買の際に、これまで女子医大と取引実績がなかった江戸川区の不動産会社に、仲介業務をさせるよう部下に指示しました。岩本先生の自宅近くの誰も知らない小さな会社です。博友寮跡地の売却も同じ不動産会社でした。ところが、本来は自治体との土地取引の場合には仲介業者は必要ありません。にもかかわらず仲介を依頼し、しかも高額な手数料を払うのはおかしいと思いました」