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一般病棟の入院管理料と比較すると約6倍の収益

 去年9月以降、女子医大病院のICUは、「特定集中治療室管理料3」の診療報酬で請求されていた。これは、患者1日あたり、「96,970円」(*注1)になり、一般病棟の入院管理料「15,660円」と比較すると、約6倍の収益になる。

 ただし、「管理料3」のICUは「専任の医師が常時、特定集中治療室内に勤務していること」という要件が定められており、実際に24時間体制で医師が勤務している“記録”が必要だ。

(*注1:特定集中治療室管理料3で、7日以内の期間の場合)

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ICUで使用される生命維持管理装置(エクモなど)(女子医大HPより)

 先に述べた通り、去年9月以降、女子医大のICUには、集中治療医が1人しかいなかった。そこで経営陣は、24時間体制のICUを維持する、苦肉の策を掲げたのである。

「外科手術などを行なった各診療科の医師が、ICUで患者の集中治療も行う」

「夜間のICUは、心臓血管外科の医師が責任者として担当する」

 経営陣の方針によって、医師が24時間体制で勤務する「ICUの要件」は満たされた。ただし、大学病院においてICUが「医療安全の砦」とされるのは、高い専門性とスキルを兼ね備えた集中治療医の存在が前提条件だ。

 ではなぜ、心臓血管外科の医師が夜間のICUを担当させられたのか。詳しい経緯を知る、元女子医大の医師が内情をこう明かす。

心臓血管外科のスタッフ「夜間責任者を引き受けられない」

「心臓血管外科に所属する友人の話によると、以前から心臓血管外科では手術した患者をフォローするため、夜間当直をICUに置いていました。それで集中治療医がいなくなった去年9月以降、ICUの夜間責任者を担当するように言われたそうです。

 しかし、ICUには脳外科や消化器外科の患者もいますので、修羅場に慣れている心臓血管外科でも急変した時の対応は難しい。それで心臓血管外科のスタッフが『他の診療科の患者については、一切の責任を負わせない旨を文書でほしい』と病院長に要求したそうです」

心臓血管外科の手術風景(女子医大HPより)

 そして、病院長から文書が渡されたが、要求した内容は反映されていなかった。

 “問題が起きた場合は、当院全体で責任を負う。心臓血管外科や医師個人のみに責任を負わせることはしない”(医師の記憶に基づく病院長の文書要旨)

 この内容では、他の診療科の患者について、完全に免責されることにはならないため、心臓血管外科のスタッフは、改めてICUの夜間責任者は引き受けられないと病院長に伝えたが、聞き入れられなかった。

「その後、ICUの管理日誌に夜間の責任者として、心臓血管外科スタッフの名前が勝手に使われていたそうです。それを知った同科スタッフは、板橋(道朗)病院長に抗議の文書を送りつけ、改めてICUの夜間責任者は引き受けられない、と伝えたと聞きました。その後に、厚生局の調査が入ったのです」(同前)

 こうした経緯で、夜間のICUに医師が勤務していた記録がない、という状況が起きたという。