嵐のような強い風雨が吹き荒れた、3月29日の午前8時30分、東京女子医科大学(東京・新宿)に、約30人の捜査員が次々と入った。同時刻、東京・江戸川区の岩本絹子理事長(77)の自宅にも、多くの捜査員が入っていた。

元事務長の特別背任

 関係者によると、警視庁捜査二課が一斉に家宅捜索を行ったのは、10箇所以上におよぶ。今回の容疑は、東京女子医大の同窓会組織「至誠会」の元事務長が、勤務実態がない元職員に対して、約2,000万円の報酬を支払った、特別背任(一般社団法人法違反)だという。

 この2人は、文春オンライン「東京女子医大の闇」#12で報道した、岩本理事長に忠実に仕えてきた側近男性Yと女性Xである。新聞やテレビなどのメディアがこの家宅捜索を報じたが、これは疑惑の一端にすぎない。岩本理事長を中心とした、隠された疑惑のカネの構図とは?

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関係先10数箇所を一斉捜索した警視庁

 女子医大の弥生記念教育棟の前で、捜査の様子を見守っていた女子医大出身の医師はこう語った。

「警察の家宅捜索が入ったというニュースを聞いて、ここに駆けつけました。いよいよ岩本絹子さんの疑惑が明らかにされると思うと感慨深いですが、彼女のやりたい放題を許してしまったのは、大学理事や私たち同窓生の責任も大きいと感じています」

 まず、本事件の背景にある、岩本絹子氏と至誠会の関係に触れておきたい。

 至誠会は1910年(明治43年)に設立された、女子医大の同窓会組織で、約4500人の卒業生が会員となっている。病院や看護学校なども経営しており、2011年から一般社団法人となった。