「今の看護師数では、患者さんの安全は到底守れません。病院としても人を増やしたいのですが、本部の許可が下りない」

「声を上げても、本部に潰されてきた。看護の現場が崩壊した一番の元凶は、機構本部の体質です」

 こう語るのは、独立行政法人国立病院機構(NHO)の病院幹部たちである。

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職員が大量退職する“ブラック労働”の根本原因

「週刊文春」が4週にわたって報じてきたNHO傘下の病院看護師の“ブラック労働”問題。全国140の旧国立病院が所属し、「地域医療の基盤」とされるNHOの看護師らが、サービス残業や過重労働などに耐えかね、大量退職しているのだ。

「年度末で計100人の看護師が辞め、来年度の募集も定員割れ。もう持ちません」(東京医療センター看護師)

「ナースコールが鳴っても皆忙しくて駆けつけられず、放置された患者さんがしょっちゅう転倒している」(大阪医療センター元看護師)

 これまで情報提供窓口「文春リークス」に寄せられた告発は、3月6日時点で171人分。その中には看護師だけでなく、病院幹部や事務職、NHO本部の関係者らの声も含まれる。

NHOの楠岡英雄理事長

 現場を俯瞰できる彼らが、“ブラック労働”の根本原因として訴えるのが、NHO本部による徹底したコスト面での「締め付け」である。

「本部はとにかくコストを絞る。各病院の看護師の定員は本部が指示してくるのですが、診療報酬とのバランスで本当に必要最低限の配置しか認めてくれない。増員を要請すると、まるで嫌がらせのような量の資料を作らされ、結局いつも不許可。『業務改善で頑張って』の一点張りです」(NHO病院幹部)

「50万円以上の医療機器は、本部の許可がないと買えない。しかも、許可されるのは修理不能の証明書が出た機械の買い替えのみ。NHOは旧国立病院時代の古い建物も多いのですが、築60年級の、耐用年数をとっくに超えた設備を使い続けろと平気で言ってきます。衛生を徹底すべき手術室でも漏水する有様ですが、『改修したら使えるでしょ』と」(NHO病院事務職)

「あちこちに水漏れ用のバケツを置いて、パソコンにはビニールシートをかぶせて帰っていました。仮眠中に汚水が降ってきたことも。空調も効かず、夏は患者が熱中症になりそうです」(大阪医療センター元看護師)