厚労省に“絶対服従”の構造的原因
「NHOの職員が非公務員化されたのは15年度から。公務員時代の名残から、厚労省とNHO本部の間では人事交流や“天下り”が根強く残っています。その上、本部の企画経営部長や財務部長といったヒト、モノ、カネの主要部署のトップは、医療現場に出たこともない厚労省の役人ばかりで占められている」(同前)
本部職員が続ける。
「彼らは2、3年でまた厚労省に戻りますから、その後の自分の立場さえ守れればいい。病院がどうなろうと、看護師がどうなろうと、とにかく人件費等の固定費を削減し、目先の経営成績を少しでも良く見せたいだけ。病院の現状を国に伝え、現場を守るはずの本部が、厚労省と一緒に現場を壊してきたのです」
現在、NHO本部には5人の常勤理事がおり、うち副理事長を含む2人が厚労省のキャリア官僚だ。昨年末まではもう1人、厚生省のノンキャリアが天下りで役員に就いていた。
その中の“ドン”が副理事長職で、19年3月から古川夏樹氏が就いている。
「理事長は歴代、学者や研究者ですので、実務のトップは実質、副理事長です。副理事長の席は厚労省のキャリアが代々座るという『暗黙のルール』があります」(別の事務職)
「本部職員も古川氏のハンコをもらうため、日々彼の目の前でサービス残業しています。ただ、『長時間労働は現場のマネジメント不足』『金も資源も削れるだけ削る』という考えなので、現状よりコストをかける案はなかなか通りません」(別の本部職員)
「文春の報道も当時の本部は『まあ、いつものこと』という認識。『一部で大きな声を上げる人がいるから、全体として“ブラックだ”みたいな印象になってしまう』と言っている役員もいます」(前出・本部関係者)
取材に応じた古川副理事長の回答は
3月5日夜、古川副理事長の自宅を訪ねると、対面での取材に応じた。
「とにかく万全の態勢で医療をしたいという現場の気持ちはわかります。でも医療が高度・多様化し、対応しきれないところは、人も増やしながら、より効率化できればと。私が来たときは収支は赤字でしたが、いまは工夫して均衡まで持ってきている。NHOの立場を厚労省に説明し、フェアにやっているつもりです」
――NHOとして国に運営費を要請すべきでは?
「いただければ、それはありがたいですけど……国は国のお考えがあります。(防衛費も)うちは医療が大事と説明はしましたけど、我々がどっちが優先だという立場じゃないので」
そしてこうも付け加えた。
「取材にお答えするのも、結構おっかないところはあるんですけど。報道にあった事案は全て確認して、逃げずにちゃんとやっていければと思ってます」
国が真剣に取り組まねば、看護師たちは救われない。