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「残業は月に100〜180時間」

 予算の縮減は、医療を支える事務方にも及ぶ。

「病院事務をしていますが、残業は月に100〜180時間。三六協定で月45時間しか残業を認められませんから、残り130時間は勤務を記録させてもらえず無給です。皆、昼休みは食事もとらず仮眠にあてている。明らかに人が足りませんが、増員は認められないままです」(別の事務職)

新木一弘・東京医療センター院長も元厚労省キャリア

 人員の抑制が人命を奪ったこともある。宮崎県の都城医療センターでは2016年、当時20代の事務職の男性が3カ月で計約440時間もの残業の末、自宅で自殺。労災に認定され、NHO本部と病院の当時の上司が、労働基準法違反の疑いで書類送検された。

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国立とは名ばかりで「実際にお金がない」

 NHO本部はなぜ、これほどまでコスト削減にひた走るのか。本部関係者が背景にある事情を明かす。

「一言でいうと、実際にお金がない。『国立』とは名ばかりで、国が行政法人の運営のために交付する『運営費交付金』を、診療事業においては12年度から1円も貰っていません。一方、民間病院では『儲からない』と敬遠される難病患者や、重症心身障害の患者の受け入れは、国の要望に応えて続けている。不採算で当然の部門を抱えつつ、自らの収入のみで経営を成り立たせようとしているんです」

 国の支援がない一方、機構が生んだ利益を国が「吸い上げる」仕組みはある。

「5年ごとに中期目標を定め、5年の終了時に残っている利益は国庫に返す決まりです。なので、病院を建て替えるための長期的な内部留保を増やすのも厳しい。コロナの補助金でここ数年はなんとか持っていますが、五類になればすぐに赤字でしょう」(前出・病院幹部)

 さらにこんな追い打ちも。

「岸田政権の打ち出した防衛費大幅増額の財源として、NHOの積立金422億円が国に徴収されようとしています。中期目標の5年間でコツコツと積み立て、来年には建て替えや賃金引上げの資金として使われるはずのお金です」(医労連・森田進書記長)

 国からは負担増と利益返納を強いられ、そのしわ寄せを本部が病院の現場に押し付けているというわけだ。

 前出の病院幹部が憤る。

「利益を出せない医療も提供していますから、国からの運営費補助はあって当然。それなのに、本部は交付金の復活も交渉せず、厚労省の無茶な方針に全く逆らおうともしません。『議論はしました』と言って、結局いつも言いなりなのです」

昨年10月1日のNHO「退職公務員等の状況」

 職員や幹部らによると、この“絶対服従”には、構造的な原因があるという。