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疑惑どころか嘘を暴く決定打ではないだろうか

 これらはある意味、官邸を訪問した愛媛県職員の残した「首相案件」備忘録が引き金となり、明るみになったともいえる。昨年、今治市が情報公開請求で嫌々出してきた黒塗り“のり弁文書”とは打って変わり、愛媛県知事の中村時広は、自らの職員が書き残した備忘録の正当性を主張した。

愛媛県が公表した柳瀬氏の名刺 ©時事通信社

 そして今度の国会で、こうした新たな事実が次々と認定されていった。野党議員はこれをもって「疑惑はますます深まった」と常套句でいつも質疑を締めくくるが、疑惑どころか嘘を暴くかなりの決定打ではないだろうか。ふつうとうの昔に内閣が倒れていても不思議ではない。

 ただし、こと事実の解明という点では、これで十分か、といえば、むろんそんなわけはない。今度の国会質疑の中で、引っかかった部分も少なからずある。たとえば立憲民主党の蓮舫は、「官邸での会議は愛媛県文書にある1時間半ではなく、40分ほどではないか」と問い質すと、柳瀬も「それほど長くなかった」と頷いた。

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残りの50分、いったい官邸で何があったのか

 2015年4月2日、官邸内でどのような話し合いがもたれたのか――。肝心の中身が今もってはっきりしないのである。愛媛県文書にある元文科大臣の下村博文発言の意味するところもいま一つ不明だし、加計学園の誰が訪問したのか、についても然りだ。

 改めて時系列に整理すると、加計学園側の官邸入りがこの日の15時で退館が16時30分。仮に蓮舫の質問が正しければ、15時40分前後に面談が終わったことになるが、県の職員や加計学園の幹部は残り50分をどう過ごしたのか。またその間の15時35分、下村が官邸を訪れ、安倍首相と面談したという。つまり愛媛県や今治市の職員と入れ替わるようにして下村が入館している。

加計学園との関係について、森氏の取材から逃げた下村氏 ©文藝春秋

 いったい官邸で何があったのか。その詳細は真実を解明するうえで必ず焦点になるところであり、愛媛県をはじめ当事者がその気になれば、それらが明らかになるはずだ。そして換言すれば、そこが明らかにならない以上、黒い霧は晴れないともいえる。

 一強と持て囃されてきた安倍政権の危うさは、取材をすればするほど痛感させられる。岩盤規制にドリルで穴をあける「国家戦略特区」や労働者の働き方改革を実現する「一億総活躍社会」といった時代がかった大袈裟な表題を掲げるが、その実、政策は第一次政権のときの政策の焼き直しばかりだ。それは、お気に入りの取り巻きたちとの「悪だくみ」に思えてならない。ウンザリのひと言で、片づけるわけにはいかない。

(文中一部敬称略)

悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞

森 功(著)

文藝春秋
2017年12月15日 発売

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