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 金利上昇による返済負担を避けるには、いまのうちに固定金利に借り換えればいいと、誰もが考えるだろう。だが10年固定金利はすでに1%台まで上がっていて、変動金利に比べて毎月の負担が10%以上増えてしまう。こうして多くのひとが、大きなリスクを抱える変動金利を選ぶのだろう。

「頭金なしで住宅ローンが組める」と宣伝する不動産業者がいるが、これは無限大のレバレッジをかけて不動産の信用取引をすることなので、金利の上昇や不動産価格の下落に対してきわめて脆弱だ。将来、金利が上がって返済が苦しくなったとき、マイホームを売却しても借入資金を返済できないと、住む家がなくなったのに借金だけが残ることになる。自己破産で借金は清算できるが、クレジットカードがもてなくなるなど、信用が毀損することは避けられない。

リスクなしのインフレ対策とは

 そもそも物価が上がったときに、それを上回って株価や不動産価格が上昇するという保証はない。そればかりか、ファイナンス理論では、他の条件が同じであれば、金利が上がれば株や不動産の価格は下落することになる。金利の上昇で資産の現在価値が減価するからだが、直感的には「家賃が変わらなければ、同じ投資収益を確保するには、不動産価格が安くならなければならない」と考えれば理解できるだろう。

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政策会合後に会見する植田日銀総裁 ©時事通信社

 そこで「臆病者」のために、リスクなしでインフレ時に金融資産を保全することができるかを考えてみよう。

 インフレによる資産の減価に保険をかけるのに使われるのが物価連動国債だ。

 一般的な国債は利子と元本が固定されているが、物価連動国債はコアCPIに連動して元本が変動する。表面利率は固定だが、元本が増減するため、それに応じて受取額は変わる。ただし、10年物価連動国債の現行の表面利率は0.005%ときわめて低いため、利子は無視して、物価が上がれば元本も増える国債だと考えればいいだろう。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「インフレに克つ 臆病者の資産防衛術」)。全文では、物価連動国債の詳細も紹介されています。

 

記事全文(7,000字)では、さらに下記のテーマについて深堀りしています。

 ・物価上昇で年金が目減り
 ・個人向け国債には「おまけ」が
 ・不確実な未来より「確実な損失」
 ・人生100年時代の基本戦略

 

「文藝春秋 電子版」(初月300円から)では下記の記事が読み放題です。

・「インフレに克つ 臆病者の資産防衛術」橘玲
・「臆病者のための『新NISA活用術』」橘玲
・「臆病者のための『資産防衛術』」橘玲
・「教育無償化は税金のムダ使いだ」橘玲
・「橘玲のイーロン・マスク論」橘玲