さまざまな住人が同じ建物に住む集合住宅は、住人同士のトラブルが発生しやすい環境だ。故意に迷惑行為を行うのはもってのほかだが、意図せず加害者になるケースも珍しくない。集合住宅に住み、気づかぬ間にトラブルの種を蒔いてしまった人々に話を聞いた。
◆ ◆ ◆
入居者が漏水を発生させた場合、補償金を払うのは加害者本人
集合住宅でよくあるトラブルのひとつに“漏水”がある。居住スペースの水漏れの原因が配管の故障や老朽化など共用部にある場合は、賃貸物件の貸主が被害に遭った住人に補償金を支払う。しかし、賃貸の部屋の入居者が漏水を発生させると、その加害者本人が補償金を払わなければならない。
会社員の村瀬隆さん(仮名・37歳)は、自室のワンルームが漏水の発生源になってしまった経験を持つ。
「5年ほど前、仕事中に水道局から電話がかかってきて『あなたの部屋で漏水が発生している可能性がある』と言われたんです。まったく身に覚えがなかったのですが、急いで家に帰ると部屋の床が水浸しになっていました」
水道局からは、同じ物件に住む住人から「水が天井から滴り落ちてくる」との連絡が入り、その部屋の上に位置する村瀬さん宅の水道を止めたところ、水漏れも収まったとの説明を受けた。漏水被害は、真下の部屋だけでなく、その両隣の部屋にも及んでいたという。
泊まりに来ていた彼女が「蛇口を締め忘れたかも」
村瀬さんは「真偽は定かではないので、断定はできない」としながら、漏水の原因についてこう話す。
「水漏れが起きた日は、交際中の彼女がうちに泊まりに来ていたんです。その日はちょうど点検のためにマンション全体が断水する予定があり、彼女が洗い物をしている最中に水が止まってしまったとか。彼女曰く『もしかしたら、そのときに蛇口を締め忘れたかもしれない……』とのことでした。ただ、これも僕らの推測に過ぎないので、今でも原因は謎のままです」
知人からは「そもそも1室の水漏れで3部屋も漏水するのはおかしい。マンションの構造に問題があるのでは?」との見解もあり、個人的には納得がいかない部分も多々あった。しかし当時は、原因を解明するほどの気持ちの余裕も時間の猶予もなかったという。