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30個のアカウントを駆使して指示していた

 合同捜査本部の調べで、首都圏の連続強盗事件では、指示役が通信アプリを通じて約30個のアカウントで実行役に指示していたことが判明した。アカウント名は戦国武将として知られる「織田信長」「明智光秀」などのほか、文豪の「夏目漱石」。ほかに漫画やテレビ番組のタイトルをまねた「JOJO」「ゴッサム」といったもの。

 さらに、「赤西」「小山豊」などの個人名のようなものなども確認されている。一部のアカウント名は複数の強盗事件で重複して使われていた。

市川の強盗致傷事件で送検された高梨謙吾容疑者(21)を乗せた車 ©時事通信社

使い捨てにされる若者たち

 SNSで指示された実行役が連続して強盗事件を引き起こした例として「ルフィ事件」がある。ルフィなどを名乗る男たちの指示によって、2022~23年に全国で発生した。一連の事件のうち、23年1月に東京都狛江市の住宅で起きた事件では90歳の高齢女性が全身を暴行されて死亡するといった残忍さで新聞やテレビのニュースで大体的に報道された。

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 関連する強盗事件は14都府県で50件以上に上り60人以上が逮捕された。いずれも、「ルフィ」や「キム」などを名乗った渡辺優樹、今村麿人ら4被告がフィリピンの入管施設から指示していた。

 前出の警察当局の捜査幹部は、「指示役は安全地帯にいて、危険な強盗を実行役らに強要する犯行形態も今秋の首都圏での連続強盗とルフィ事件は構図が同じだ。高額報酬にだまされて実行役となった若者たちは使い捨てにされるだけだ」と特徴を指摘する。

警察当局が期待を込める「電子鑑識」とは

 強盗の実行役たちは続々と逮捕されている。しかし、指示役の所在は現在、全く判明していないのが実情だ。ただ、前出とは別の警察当局の捜査幹部は、「今後の捜査は、デジタルフォレンジックがポイントだ」と期待を込める。デジタルフォレンジックとは「電子鑑識」といった特殊技術のことで、デジタルデータの証拠を収集することで犯罪行為を立証する活動だ。

 今回もルフィ事件同様に、スマホの秘匿性の高い通信アプリが使われている。