ルフィ事件でも使用されたアプリの特徴
アプリの特徴としては、一定時間が経過すれば通信の内容が消去される設定となっている。そこでデジタルフォレンジックの技術で強盗事件の指示のやり取りのデジタルデータを復元して、捜査の客観証拠とするのだという。
例えるならば、殺人事件の現場などで行われる鑑識活動だ。わずかな指紋や足跡、毛髪などのDNA型を採取できる関係資料を採取して証拠として保存するのと同じになる。
しかし、続けて捜査幹部は「容易ではない」とも語る。
「デジタルデータを復元させるアプリを使用しても、復元できないことが多い。スマホのロック機能がある場合には解除するためのパスワードが必要。AIなどを利用しつつ連想したパスワードを入力するにしても一定回数、間違えると凍結されてしまう」
ルフィ事件で活躍した警視庁の“あるチーム”
ルフィ事件当時と同様に今回の事件でも、スマホの解析には警視庁捜査支援分析センターの専門捜査員が担当している。前出の捜査幹部は、「ルフィ事件の際には、渡辺被告らのスマホのロックを解除し、事件の全容解明につながった。今回も実行役のスマホから指示役らにつながる捜査を進めねばならない」と意義を説明する。
さらに、捜査幹部は「カネの流れから指示役を浮上させることができるかもしれない」との見方も示す。
「強盗の被害金を複数の銀行口座を経て資金洗浄(マネーロンダリング)していることが予測される。カネの行先を根気強くたどれば何かしらの手がかりがあるかもしれない」
ルフィ事件でも通信記録と資金の流れを追うことで、フィリピンにいるルフィグループが浮かび上がった。
今回の事件では実行犯の取り調べと並行して、警察幹部が「本当のワル」と非難する指示役を突き止める捜査も進行中だ。だが、事件では死者も出ており取り返しのつかない事態となっている。
実行役についても今後、裁きによる報いが待っている。特に横浜の事件では、強盗殺人罪に問われる。同罪の量刑は死刑か無期懲役だけだ。20代の若者たちが安易に闇バイトに応じたばかりに、人生の実り多い時期を刑務所で過ごすことになりそうだ。代償は大きい。