筑波大の国際政治学者である東野篤子教授をX上で誹謗中傷したとして先月29日、水戸地検が茨城県警の現役幹部を侮辱罪で略式起訴し、30万円の罰金刑が下っていたことがわかった。
記者が解説する。
「本来、犯罪を抑止し取り締まる側の警察官が、匿名で研究者を中傷していた事件です。起訴されたのは40代のA警部。略式手続きなので罪を認めていると見られ、同日、刑が確定しています。侮辱罪の罰金刑としては、30万円は最も重い部類です」
ウクライナ侵攻をめぐり“陰謀論”を展開
『週刊文春』2024年6月27日号では、〈茨城県警幹部が筑波大・東野篤子教授への侮辱罪で家宅捜索されていた!〉として事件を詳報している。
「2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、SNSでは情報発信が盛んになり、中には根拠のない陰謀論も多くみられるようになった。こうした背景から研究者に対する攻撃的な投稿が増えており、特に東野教授をはじめとする女性の研究者は、容姿をあげつらうなど侵攻とは無関係な誹謗中傷の標的となっていた」(同前)
A警部は、極右系カルト「Qアノン」へ傾倒していたと見られ、22年3月には、自らの匿名アカウントに〈我々デジタルソルジャーはマスコミに屈せず、このデジタル空間で闘い続けなければ人類の未来はない〉などと投稿。
さらにA警部はウクライナ侵攻をめぐってX上で専門家を次々と罵倒しており、東野教授に対しても、昨年5月に〈見た目からしてバケモノ〉と中傷した上、東野教授の代理人から損害賠償を求める通知が今年1月に届いた後も、〈ウクナチ(注・ウクライナナチスの略称)擁護のヒステリーババアのスラップなんかに怯んでいられない〉などと投稿を続けていた。
事実上の謹慎処分を受けていた
4月に東野教授がA警部を侮辱罪で刑事告発すると、5月中旬にA警部は警務部への異動が公表された。
「捜査に伴うもので、実質上の謹慎です。さらに家宅捜索まで行われたが、県警では思想を示す書籍などが見つからなかったとしている一方でパソコンの押収やアカウントの保全はされず、書き込みに至る思想的な背景は不明のままです」(捜査関係者)
A警部の職務上の立場も問題視された。
「A警部は、3月から装備施設課に所属するまでは県警本部で生活環境課の課長補佐、署で生活安全課長を務めるなど、まさにネット上でのトラブルを取り締まる部署にいた」(同前)