“驚安の殿堂”ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)会長の安田隆夫氏と、ニトリホールディングスの会長・似鳥昭雄氏が対談し、注目されている両社の後継者問題について胸中を明かした。日本を代表する小売2社の創業者が後継者に求めるものとは何か――。
安田氏「運に向き合う感受性を磨くことが経営者には重要」
新卒で入社した不動産会社が早々に倒産し、しばらく麻雀で糊口をしのいでいた安田氏と、家具店を始めたものの資金繰りに行き詰まって自殺まで考えた似鳥氏。ドン底から這い上がった両氏ともに、成功するには「運」が重要だったと語る。安田氏は自らの経験から、運との向き合い方をまとめた『運 ドン・キホーテ創業者「最強の遺言」』(文春新書)を今年上梓した。安田氏の考える「運」とは、どういうものか。
「運は、自らの行動によって変動する『パラメータ』のようなものですね。起点となる運への対応の仕方によって、幸運にも不運にもなる。運に向き合う感受性を磨くことが、経営者には重要なんです。
個人としての運を『個運』、集団としての運を『集団運』と私は呼んでいます。経営者は、個運だけでなく、従業員、お客様、取引先など、みんなを幸運にしないと、業績は上がっていかない。つまり集団運を良くすることが重要です」
「運」は決して偶然の産物ではない
似鳥氏も「ニトリの成功は『運が7割、実力が3割』」といい、経営における「運」の大切さを説く。
「運とは、それまでの人づきあい、失敗や挫折といった経験から醸成されるもの。決して偶然の産物ではないですよ。
お互い無一文からのスタートだから、誰も挑戦していないことに取り組んでいかないと話にならない。積極的にリスクを取る勇気がある人には、運がついて来るんでしょう」
ともに運を引き寄せ、PPIHは今年2兆円超の売上を記録し、ニトリは36期連続となる増収増益を達成する一大企業にまで成長した。そして、安田氏は今年75歳、似鳥氏は80歳を迎える。否が応でも、経営を次世代に託すことを考えはじめる頃だ。
では、後継者問題をどのように考えているのか。