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エジプトで女一人で出歩くのは難しい

――専業主婦だと夫の対応も違う?


HANA 専業主婦だと夫の完璧な支配下にあるので、逆に少しゆるいのかもしれないですね。あと、別に良いことではないですけど、専業主婦になっちゃえば、買い物とかも行かなくていいんです。基本的に女は外に出るな、という感じなので。ただただ3食のご飯を作ること、子どもと旦那の世話をすることが生活のすべてで。

 私はスウェーデンで暮らしていたこともありますけど、エジプトとは男女の力関係がまったく違いますよね。

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――スウェーデンでは男女平等を感じた?


HANA たとえば、食事代を男性が払うという考え方がなかったですね。女性は「私、稼いでますから」と言って、自分が食べたものは自分で払っていました。

 そもそもエジプトでは、男性世界と女性世界がはっきり分かれていて、男性専用のカフェ、女性専用のカフェがあるし、男女カップルで遊ぶというより、男女別かグループで遊ぶような感じです。

 あと、女の人が一人で何かすることが基本的に難しいですね。

 

――具体的にはどんな制限が?

HANA 例えば、痴漢とかスリとかの危険があるから女性一人では電車に乗れないです。子どもの頃から「女一人で出歩くな」という教育を受けていることもあって、生活はかなり大変だと思います。

 その一方で、困ったときには男性に守ってもらえるのも確かで。「女性は重たい荷物を持たない方がかわいい」っていうのがエジプトなんで、私自身はそっちのほうが居心地は良かったです。

ベリーダンサーはエジプトでは娼婦

――HANAさんは外で仕事をして自由に生活されているので、エジプトで求められる女性像としては真逆ですよね。


HANA 彼の家もお母さんが働いていたからかもしれないですが、男尊女卑的なところが少ないということで言えば、夫はエジプトでは珍しい男性だと思います。

 それでもやっぱり、私がベリーダンサーとして活躍することより、キッチンの掃除とか寝具の入れ替えをしたときの方が彼はめちゃくちゃ喜びますね。上機嫌になって、「わあ、ありがとう」って感じです。 

――ではモスタファさんのご両親も、HANAさんのことに理解がある?

HANA 私はベリーダンサーなので、彼の実家の人と会ったことがないんですよ。ベリーダンサーってエジプトでは娼婦なんです。だから、息子が娼婦と結婚したなんて知ったら、ご両親は心臓発作で死んじゃうくらいのことなんです。

写真=深野未季/文藝春秋