時効3週間前に逮捕された、「松山ホステス殺害事件」犯人女性の福田和子(享年57)。彼女と交流した人々が明かすその人柄、そして逮捕後の彼女の人生とは…。ノンフィクション作家の八木澤高明氏の新刊『殺め家』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

かつて彼女が暮らしていた街(写真:八木澤高明)

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 そして取材の途中で入ったお好み焼き屋では、ひとりお好み焼きを焼いていた女性がひと言。

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「哀しくなるね。切なくなるね」

 彼女の言葉からは、福田和子を犯罪者として蔑むわけではなく、ひとりの女の生き様をそう表現した。

 私は犯罪者の故郷を訪ね続けているが、このような感覚を持つ地元の人々に会ったのは初めてのことだった。それ故に、彼女がこの土地で長男と会ったことが必然性のあることに思えたのだ。

時効3週間前に逮捕

 私は福田和子の軌跡を辿りながら、彼女が逮捕された福井県福井市へと向かった。彼女はこの地のおでん屋で福田和子と感づかれ、警察に通報され、時効3週間前に逮捕されたのだった。

 福田和子が通っていたおでん屋は無くなっていたが、同じ経営者が近くで小さな飲み屋を開いていた。

 店のドアを開けると、店の女主人と目が合った。彼女は一瞬驚いた表情をした。おそらく常連ばかりの店で、新規の客などほとんど来ないのだろう。カウンターだけの店は、常連と思しき2人の客だけだった。

 私はしばし、他愛もないことを話したあと、福田和子について尋ねた。

「普通の子だったよ。ただ誰にでも愛想は良かったね。福井の人間だと言っていたけど、話し方が違うから、すぐに福井じゃないとわかったよ。嘘八百言っている感じだったよね」

 どこか後ろめたい気持ちがあるのか、女主人はすぐに福田和子の話を打ち切った。代わりに店の常連さんが福田和子との思い出を話し出した。逮捕された日も店で同席していた彼女が言った。