103万円、106万円、130万円の壁……。年収の壁について、いま気になる話題を取り上げた『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/前編から続く

◆ ◆ ◆

家族の「扶養」になる

 自身の国保料が払えない時、家族の誰かが被用者保険(組合健保、協会けんぽ、共済組合)の加入者なら、その“被扶養者”(扶養家族)になれば保険料の負担が増えない。

ADVERTISEMENT

 例えば40代や50代の子どもが、自身の協会けんぽや組合健保に、年金収入のみの親を加入させて、被扶養者とすれば親の保険料は追加でかからないのである。しかし親が要介護者で介護サービスのために「世帯分離」をしていたらどうだろう。被扶養者のままでいられるのだろうか?

写真はイメージ ©shibainu/イメージマート

「結論からいえば大丈夫です」と太田哲二氏が言う。

「被扶養者の範囲は、被保険者の直系親族、配偶者、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人であれば、『世帯』や『同居』は要件ではありません。親は世帯分離しても、子どもの協会けんぽや組合健保に加入したまま、介護保険のメリットを享受できるのです」

 ここはかなり重要なポイントだと思う。同居していなくても、世帯が一緒でなくても、被扶養者でいられるのだ。「主として被保険者に生計を維持されている」とは、ケース・バイ・ケースの側面もあるようだが、「同一世帯でない場合は対象者の年間収入が130万円(※対象者が60歳以上または障害者の場合は180万円)未満で、かつ被保険者からの援助による収入額より少ない場合には被扶養者になる」(太田氏)という。

超えない範囲で仕事をする「130万円の壁」

 また、年収130万円を超えると社会保険上の扶養ではなくなり、自分自身で社会保険に加入し、保険料を納めなければならない。いわゆる「130万円の壁」である。だから被扶養者になるのなら、「1年で130万円を超えない範囲で仕事をする」ことが条件だ。勤務先から交通費の支給がある場合、それを含んだ金額なので気をつけよう。

 ちなみによく聞く「103万円の壁」とは、被扶養者自身に所得税がかかり始める金額のこと。逆に言うと1年間の給与収入が103万円以下であれば、所得税はかからない(ここには交通費支給分は含まれない)。配偶者の扶養に入っている場合は、扶養者が合計所得900万円以下である人は満額(38万円)の配偶者控除が受けられ、その分所得税も安くなる(103万円を超えた場合でも、被扶養者の給与収入が103万円超150万円以下、納税者本人の合計所得金額が900万円以下であれば38万円の配偶者特別控除が受けられる)。このように所得税などの支払いが免除される「税法上の扶養」と、健康保険料の負担が免除される「社会保険上の扶養」は違うので混同しないこと。