公約に関するミスリード
例えば、〈家計が急変した学生に対し、返済不要の県独自の奨学金(県内就職が条件)を創設します〉という項目は、〈着手〉としてカウント。関連施策として、〈奨学金返済中の若者を雇う県内中小企業に対し返済額の一部を補助する事業〉(県内企業人材確保支援事業)を挙げる。
だが、これはあくまで、すでに返済中の奨学金の一部を県が負担する制度だ。新たに〈県独自の奨学金を創設〉するという公約の着手とは言い難い。また、この事業自体は前知事時代の2016年に始まったものを拡充したに過ぎない。
2008年から開始した継続事業も〈達成・取り組み中〉
また、〈病児保育や一時預かり等を充実します〉という項目は、〈達成・取り組み中〉としてカウント。その施策内容は〈(1)病児・病後児保育推進事業で継続実施 (2)一時預かり事業で継続実施、低所得者世帯を対象に利用者負担軽減事業を実施〉とあるが、そもそも(1)については、2007年から国庫補助のもと継続実施している。
(2)についても、兵庫県は一時預かり事業を実施する施設全体への補助などは行っておらず、児童福祉法第34条の12の規定に基づき必要な「都道府県知事への届出」を受け付けるなど、制度運営を担うのみ。低所得者世帯を対象に利用負担を軽減する「ひょうご保育料軽減事業」は、2008年から開始した継続事業で、2019年まで度々補助の拡充や年収ラインの緩和を行ってきたものの、斎藤知事時代に拡充した形跡はない。
県関係者は次のように証言する。
「県はそもそも、〈公約〉の達成状況を調べて斎藤知事に渡したわけではなかったのです。それを斎藤知事が公約についての数字だと言い換え、選挙でも利用してしまったことに、担当課も憤りを覚えています」
しかも、こうした公約に関するミスリードは、実は氷山の一角なのだ。斎藤氏に見解を求めたが、期限までに回答はなかった。
12月4 日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および12月5日(木)発売の「週刊文春」では、斎藤氏の公約達成率を巡る更なる疑惑や県関係者による重要証言、沈黙を続ける折田氏の肉声や近況、政治資金パーティに関する「知事から注意喚起」LINEの存在、斎藤氏の代理人弁護士の意外な実像などについて、詳しく報じている。
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