始まった頃の『タマフル』の話をしよう
古川 始まった頃の『タマフル』の話をちょっとしましょうよ。なにしてたか覚えてます?
しまお 覚えてますよ。
宇多丸 しまおさん、記憶力がすごいですから。
古川 そもそもどんな番組が始まるっていうふうに思ってたんですか?
しまお 『宇多丸独演会』*をやられたじゃないですか。それはリスナーとして聴いていて。(*TBSラジオで『タマフル』が始まる3カ月前、2007年1月に放送された特別番組。宇多丸と古川のふたりのトークで時事問題やPerfumeの特集などを扱った)
宇多丸 そうかそうか。
しまお その前は私、『ストリーム』に出ないかって言われてたんですよ。「コラムの花道」*かなんかに。(*TBSラジオ『ストリーム』内のコーナー)
古川 ああ、しまおさんが。
しまお はい。で、それで何かネタないかなってグズグズしてるうちに、宇多丸さんのほうに「出ませんか?」って言われて、それで宇多丸さんが出ることになったんですよね。古川(こがわ)さんっていう、当時のディレクターさんが声かけてくれたんだけど、「橋本さんに取られました~」って言ってました。
古川 そのこがわさん、今回は作家として入ってもらってますよ。
宇多丸 おお、なんと。そうか。そういう『タマフル』以前の因縁もあるのか。
古川 そうなんですよ。今回、こがわさんがメインスタッフとして入ってくれてるので、そういうのがぜんぶ繋がった感じがあるんですよ。こがわさん、とっても有能だし。
宇多丸 だって、『アフター6ジャンクション』第1回の特集はこがわさん案件だもんね。「スリップ特集」*。(*4月2日初回の特集が新刊にはさまっている「スリップ」だった)
しまお なるほど。
宇多丸 本のスリップ。スリップって言ってもシュミーズ的なのじゃないですよ。
しまお 分かってます。それでともかく、当時、橋本さんと会ってね。橋本さんがまだ中野坂上に住んでた頃。いい車に乗ってて。
宇多丸 キャデラックかなんかだっけ?
古川 そうです。なんか、ものすごいでかいアメ車。
宇多丸 あれ、何アピールだったんだろうね。
古川 彼が一番イキッてた時期じゃないですか。
宇多丸 カマしてたんだ。
古川 当時住んでる家が近かったから、あのキャデラックに乗って一緒にTBS行ってましたもん。イヤだなって思いながら。
宇多丸 正気の沙汰じゃねえな。
しまお ちょっとやっぱりまだプロレスの名残が……。
宇多丸 たぶんプロレスラーの乗ってる車みたいなイメージでもあるんだと思うんだけど。
古川 学生プロレスの血がまだすごく色濃かった時代ですよね。
しまお シルバーアクセみたいなのつけてね。
古川 いわゆる「ロンドン以前」ですよね。橋本さんの。彼の歴史はロンドン旅行以前・以後で分かれるんですよ。
宇多丸 ビフォー・ロンドン。
古川 それで、番組が始まる前、しまおさんと宇多丸さんが会って顔合わせしたんですよね。そのとき僕はそこにいなかったんですけど。
しまお ベトナム料理屋さんでしたっけ? 私もあんまり覚えてないですけど。
宇多丸 そうです。ベトナム料理。僕、しまおさんは男の墓場プロダクション絡みで何度か軽く会ったことはあって。「アックス」だっけ? そこで男の墓場プロダクション特集の座談会みたいなのがあって、たぶんそれで初めて会ったんじゃないかな。でも、その時はもっとよそよそしい感じで。そのあとベトナム料理屋で顔合わせして、そこでは普通に、もう今と変わらないこの感じになってましたよね。
しまお あんまり変わらないですよね。そこからは。
宇多丸 そう。この感じでもう話が始まって。橋本さん的にはそれを見て、「ああ、これは行ける」って思ったらしいんだけど。
古川 番組が始まってしばらくはしまおさん、「ラジオ警察」*という体でやってましたよね。あの時ってどうだったんですか?(*しまおまほがTBSラジオのヘビーリスナーであることに由来し、「不慣れな宇多丸にラジオのマナーを教える」というコンセプトだった)
しまお あんまりしっくりきてなかったですねぇ。橋本さんはちょっとプロレス的な仕掛けを私に求めてて、私もそれをやろうと思ってたけど、私にはやっぱり無理で。それよりも普通の世間話をしているほうがやりやすかったから。
宇多丸 橋Pは今もそのケあるよね。
古川 全然ありますね。プロレスっぽい演出。
しまお あるあるあるある。しかも今度の番組はスーパー・ササダンゴ・マシンさんが入るんですよね。
古川 はい。月曜日ですね。
しまお だからまたそれ系の仕掛けはあるかもしれないね。
古川 仮想敵と戦って盛り上げる、みたいなのがあの人ほんと好きだから。
宇多丸 好きだし、本人が出る時は100パーそれじゃん。
しまお でも、奥さん*とタッグ組んでやったらすごい面白いと思うんですけどね。それこそWWEみたいな。(*橋本吉史の妻はTBSの林みなほアナウンサー)
宇多丸 ああ、ビンス・マクマホンがマイク持ってオラーッ! て煽るみたいな。プロデューサー自ら出てきて「オレの女房出すんじゃーい!」って。ああ、それならいいね。
古川 なかなか高度な放送になりますね。