「あ、これ行ける」みたいな手応えを感じた時
古川 『タマフル』を始めてやっていく中で、「あ、これ行ける」みたいな手応えを感じた時ってありました?
しまお 分かんないけど……。でも、駄話になった時から楽しくなりましたね。その前までも楽しくなかったわけじゃないけど、でも私もプロレスっぽい煽り方知らないし。宇多丸さんもこっちに向かってくる加減もたぶん分からないだろうし。やっぱりそこら辺は最初、難しかったかなと思うけど。
古川 途中からそのくびきが取れてやりやすくなりました?
しまお そうですね。あとせのちんさん*が入ってくれてからは、すごくラジオっぽくなったなっていう感じはする。(*ベテラン放送作家の妹尾匡夫。『タマフル』には2年目から加入)
宇多丸 「ラジオ警察」やってる最中、しまおさんが「私、そういうのじゃないんだよ」「私はそもそも宇多丸さんに何か教えるような立場の人間じゃない」って言い出したんですよ。
しまお そんなこと言ってましたっけ?
古川 ああ、なんかあったかも。そのあたりからだんだんしまおさん、限りなくフリートークっぽくなっていったというか。特に「ぼんやり」っていうキーワードが出てから今の感じになったと思う。それでしまおさんに前から聞きたかったんだけど、フリートークをしてるじゃないですか。で、時間が来て話を締めて、そろそろ終わり、みたいなときに突然前の話の続きを始めたりするじゃない? あれはわざと?
しまお 私、なんでもそうなんですよ。終わる間際とか、終わってからなにかを思いついちゃう。
古川 そうしたほうが盛り上がる的な、一種のサービスとしてやってるのか、どうなんですか?
しまお いやいや。なんか思いつくんですよね。なんでもそう。原稿とかでも、ほんと締め切り間際にいいことを思いつくんですよ。
宇多丸 思いつくだけじゃないでしょう。しまおさん、話を締めたあともずっと話し続けてるっていうパターンが多い。
しまお ああ。でも、それは納得いかないじゃないですか。納得いくまでやっぱり続けないと。
古川 みんなが「締まったね。終わりだね」みたいな空気になった瞬間、「でもさ~」みたいなことをよくやってたじゃない。
しまお でも、みんなもなかなか帰りたくないタイプでしょう?
宇多丸 それはそうだけど、それは番組終わったあとの話でしょう。
しまお 放送を終わりたくないっていう感じなのかもしれません。
宇多丸 あれはやっぱり匠の技ですよね。
しまお そうですか?
宇多丸 意識はしてないと思うけど、しまおタイミングとしか言いようがない。しまおタイムですよね。
古川 いろんな番組をやってきましたけど、あんなことするのしまおさんしかいないですよ。
宇多丸 全放送業界でしまおさんしかいません。あえて言えば、全然トーンとか言ってる内容は違うけど、室井(佑月)さんが『バラいろダンディ』で、もうとっくにその話終わってるのに「ねえねえ、でもさ」みたいな、あの感じはちょっと近い。
しまお 宇多丸さん、室井さんのことを放送で「しまおさん」って呼んだことありますよね?
宇多丸 そうそう、あるある。あと『水曜The NIGHT』ってAbema TVのプロデューサー、元プロデューサーですけど、その彼のことを昨日も何度も「橋P、橋P」って言っちゃって。これからそういう言いまつがい、増えると思いますね。宇内さんと宇垣さんとか危ないですよ。
古川 いやあ、危ないね。
しまお 私、火曜に出るっていうことは、宇垣さんの日なんだっけ?
古川 そう。宇垣さんです。彼女もなかなかピーキーな仕上がりな人で面白いですね。
宇多丸 かわいいの向こうにビヨンド的なものが見えますよ。
古川 ちょっとエッジィな感じがありますね。しょこたんっぽさを感じました。
宇多丸 ああ、そう。だとしたらかなりピーキーですね。
写真=末永裕樹/文藝春秋