「貸金庫の管理責任者にモラルハザードがあると、盗んでも発覚しない状況になっているんです」
こう語るのは、貸金庫での窃盗が明らかになった三菱UFJ銀行の関係者だ。この人物は複数の支店で貸金庫の管理業務に携わった経験を持つという。
金融業界を揺るがした、被害額10億円を超える巨額の窃盗事件はなぜ起きてしまったのか――。記者がそう疑問をぶつけると、行員のモラルに依存する貸金庫のセキュリティにおける「脆弱性」について滔々と説明するのだった。
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窃盗行員は“和久井映見似の40代後半女性”
三菱UFJ銀行が貸金庫での巨額窃盗事案を公表したのは、11月22日のことだった。経済部記者が解説する。
「2020年4月から2024年10月までの約4年半、東京都の練馬、玉川の2支店で、貸金庫に保管していた顧客資産を盗んでいたことが明らかになりました。2024年10月31日、利用客から『貸金庫に入れていた資産が減っている』といった趣旨の相談を受け、本人に確認したところ、盗んだことを認めたそうです。
被害者は約60名、被害総額は時価十数億円と言われており、資産を窃取していた当該行員は11月14日に懲戒解雇されました」
三菱UFJの発表によると“容疑者”は貸金庫の管理責任を担う立場の行員だという。同行はその素性について発表していないが、小誌2024年12月5日号で、女優の和久井映見似の40代後半女性であることが明らかになった。
窃盗事案を受け、三菱UFJは「警察に相談」(同行広報)しているとし、対策本部を設置。事案の調査や被害者への補償に向け動いているというが、全容解明には時間がかかる見立てもある。