12月2日に発表された今年の「新語・流行語大賞」で、「ふてほど」が選ばれた。しかし、いつも不思議に思うことがある。ノミネートされた言葉は11月の頭に発表されるからだ。これだと1年は10月末までということになる。11月以降にインパクトがある言葉が出てきたらどうするのだ。
たとえば今年は11月に兵庫県知事選があった。アレは流行語の宝庫だった。斎藤元彦氏が再選したのはSNSの勝利でありオールドメディアの敗北と言う声があった。そう、「オールドメディア」は今年の流行語大賞とも言ってもよいのではないか。それほど流通していたし、あらためてその意味を考えたい言葉だった。
斎藤氏を支持した人たちからすればテレビや新聞はさんざん斎藤氏側にネガティブな報道をしていたが、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首をはじめとするSNSやネット情報のおかげで「真実」を知ることができた。だから「オールドメディアの敗北」なのだろう。
一方で斎藤氏の一連の疑惑を注視していた人たちからすれば、選挙期間に新聞やテレビが中立・公平を自称しているときにSNSで真偽不明の言説が自由に飛び交った。その状態に「既存メディアはこれでいいのか」と疑問に思った人も多いだろう。つまりどの立場からもメディアは疑問を持たれていたのだ。
それならもっと早く言ってよ!
しかもメディアは選挙の翌日から饒舌になった。読売と朝日の社説を並べてみよう。
『兵庫県知事選 真偽不明の情報が拡散した』(読売新聞11月19日)
『選挙と立花氏 言動を看過できない』(朝日新聞11月23日)
それならもっと早く言ってよ! と思ったのは私だけだろうか。毎日新聞も社説で、《見逃せないのは、今回の知事選で多数の偽情報が出回ったことだ。発信力の強い「インフルエンサー」らが「パワハラ疑惑はでっち上げ」など事実でない情報を拡散した。接戦となった他候補の評判を落とす偽情報も流布された。》(11月19日)。
せめて偽情報が出回っていることを報道することはできないのだろうか? そうした意味で私もオールドメディアにはかなり不満だったのである。