「就職先」として両球団を比較すると
トレードなどによる人材の行き来も活発で、基本的に良好な関係にあると言える両球団だが、チーム作りのコンセプトは正反対と言ってもいい。
限られた予算で球団を運営している日本ハムには育成契約の選手が一人もいない。一方で、巨人は12球団最多タイの24人の育成選手を抱える。選手の数が少ないということは1、2軍を問わず、出場機会が回ってきやすいと言える。現場で経験を積む、という意味では日本ハムに軍配が上がるだろう。
給料はどうか。プロ野球選手会の調査によると、球団別の平均年俸は巨人がソフトバンクに次ぐ球界2位の6380万円。日本ハムは12位の2381万円だ。日本ハムはコストパフォーマンスが合わなくなってきたベテラン選手の肩を容赦なく叩く傾向にある。最近日本ハムからFAした大引、小谷野、陽らは若手への切り替えが早いチーム方針を察知して動いた部分も大きいだろう。高年俸をもらいつつ長く日本ハムでプレーするのは難しく、ミニマムで球団運営をしているため引退後のポストも少ない。一方で巨人はとにかくスタッフの数が多く、ジャイアンツアカデミーなど引退選手の受け皿となる組織を多数抱えている。将来的な起業や転職も視野にベンチャー企業で働くか、終身雇用が原則で、福利厚生に恵まれている大企業を選ぶか、という悩みに近いものがありそうだ。
球界の盟主であり、独特のプレッシャーと注目にさらされる巨人と、最先端の合理的な球団経営を実践する日本ハム。どちらに入るべきかは悩ましいが、両極端のチームに在籍することは野球人としての奥行きを広げることになる。仮説だが、両チームを経験できた選手は引退後、指導者としても、編成としても活躍しやすいのではないか。
高田繁氏は現役時代を巨人一筋で過ごし、日本ハムで監督を務めたのちに、日本ハム、DeNAでGMに就任しているし、巨人にドラフト1位で入団し、オリックス、米球界を経て日本ハムでプレーした木田優夫氏は現在、GM補佐の要職についている。中日監督として黄金時代を築き、後にGM職に就いていた落合博満氏だって両チームでプレーしている。巨人、オリックス、日本ハムと移籍し、16年から巨人のスカウトになった木佐貫洋氏も知性的な人格者として知られ、球団内で出世していく可能性は高い。F→G→Fと渡り歩いた実松一成や、G→F→Gの二岡智宏氏なども良い指導者になるのではないか。
巨人に入るべきか、日本ハムに入るべきか。引退後も含めた長い野球人生を考えると、どちらも正解、という気がする。
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