ホンビノス貝の酒蒸し。ZOZOマリンスタジアム内外には1000品を超える飲食メニューがあるが、この一品は特別な存在感を示している。海に近いスタジアムならではのメニュー。潮風を感じながら食べるとまた一層、味わい深さが出る。貝殻に入った大きなホンビノス貝の身。潮の香りと濃厚な貝のうまみが口の中に広がる。これこそ東京湾に隣接して本拠地を持つ千葉ロッテマリーンズならではの味だ。知る人ぞ知るマリン名物だったこの一品を5年前に取り入れた飲食業者も胸を張る。

「ホンビノス貝は千葉ブランド水産物にも認定されており、いま注目の食材です。東京湾で初めて発見されたのがマリンスタジアム付近の沖であることから、この球場とゆかりを感じて、ぜひ取り入れてみたいと思いました。販売開始は5年前で最初は1日10食ほどの売り上げでしたが、2年前くらいから常連のお客さんに定着し始めました」

 こだわりにこだわった一品である。オーブンでは調理時間がかかってしまうため、業務用レンジを使うことで新鮮で美味しいものを提供でき、時間短縮にもつなげた。そして新鮮で大きな貝を使うことを譲らない。状態の良い大きさホンビノス貝を仕入れることが出来ないのであれば、潔く販売を諦める(そのような事は年に1、2回とのことだが)。貝の魅力とホンビノス貝そのものの味を失わないように細心の注意を心がけ、誇りを持って調理し、販売をしている。

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ZOZOマリンスタジアムで売られているホンビノス貝 ©梶原紀章

ホンビノス貝を使った新メニュー

 そんな男たちは5月17日には新たなチャレンジに踏み切った。ホンビノス貝を使った新メニューの発売を敢行したのだ。その名も「ホンビノス貝 酒蒸し・ガーリックバター風味」だ。特製ガーリックバターで濃厚な味付けを行いながらも、その独特のおいしさを維持した秀逸な一品。これが当たりに当たった。それまで一日平均40食の販売だったが、100食を超えるメガヒットに。一日中、貝を洗う作業に追われたスタッフたちは「ずっと貝を洗っていたのでラッコになった気分だった」と笑いながら振り返る。

「今までは酒蒸しでしたが、ガーリックバターにすることで味がマイルドになり、ホンビノス貝の人気も上がったと思います」と担当者もホクホク顔。攻めの姿勢を貫いた新メニュー投入は吉と出た。これまで隠れた名品だったホンビノス貝が一躍、ZOZOマリンスタジアムの主役に躍り出た瞬間だった。海の真横のスタジアムでしか味わえない本格的なホンビノス貝料理。そのストーリー性もまたファンを虜にしていく。「ZOZOマリンスタジアムに来たら、一度は食べよう。ホンビノス貝」とSNSなどでも話題は広がる一方だ。