「週刊文春」の町山智浩さんの人気連載『言霊USA』をまとめた最新刊『独裁者トランプへの道』。

 トランプの返り咲き再選までの400日が詳しい現地ルポとともに詳細に報告されている。

 第2次トランプ政権において「政府効率化委員」「国土安全保障長官」「厚生長官」にそれぞれ指名された、ヴィヴェク・ラマスワミー、クリスティ・ノーム、RFKジュニアは一体どんな人物か? 連載時のコラムを紹介する。

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「私のことはもうみんな知ってるだろ」

 2024年の大統領選挙に向けて、共和党から出馬を表明している候補者の最初の討論会が、8月23日に行われた。

 ステージに並んだのは8人。しかしトップランナーはそこにいなかった。共和党内で50%を超える最大の支持者を集めるドナルド・トランプ前大統領は「私のことはもうみんな知ってるだろ」と討論会を欠席したのだ。

 支持率で2番手につけているのはフロリダ州知事のロン・デサンティス。だが、それでも支持率はわずか16%。その他の候補者はドングリの背比べ。

 討論会はこれから何度も行われ、その後の世論調査で予備選に向けて人気のない順に辞退していく「勝ち抜き戦」。通常、一番人気の候補を標的にして自分をアピールするものだが、共和党ではトランプ人気がダントツなので、トランプを批判すると支持率が下がってしまう。

 でも、下手にトランプを褒めると本選で勝てなくなる。アメリカ全体ではトランプの支持率はそう高くはないから。なにしろジョージア州の選挙管理委員会に対する恐喝罪をはじめ4度刑事起訴されている前大統領なのだ。

 トランプの副大統領だったペンスも出馬しており、討論会の司会者は「選挙でトランプの敗北を認定したペンスは間違ってないと思いますか?」と質問。さすがにほとんどがYESと回答。そりゃペンスは憲法に従っただけだから。でも、それで彼は議会に乱入したトランプ支持者にリンチされそうになった。

 トランプのジョージア州の州務長官に対する恐喝は電話の音声がしっかり残っているので有罪確実と言われている。「もしトランプが有罪になって、それでも共和党の大統領候補になったら、彼に投票しますか?」と司会者が質問した。