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ドラえもんを創造した国は挽回できるだろうか

 8月にはノルウェー・オスロを拠点とするスタートアップ1Xがロボット「NEO Beta」を24年中にいくつかの家庭へ試験的に導入する計画を発表した。身長165センチ、重量30キロで、ジャージのようなスーツを身に着けているせいかロボットと気付かないくらい人らしいヒト型ロボットである。試験導入の狙いは、実際の環境での動作確認と、データの収集にある。同月には中国のAGIBOTの他、米欧中の数社が家庭用ヒト型ロボットを発表するなど、にわかに競争が激しくなってきた。中国工業情報化部の計画では人間の動作を模倣して高度な作業をこなす「上級ロボット」を2025年までに大量生産するという。

まるで人間のように洋服を渡す「NEO Beta」1X公式サイトより

 いかに動作に必要なデータを膨大に、かつ迅速に集めるかが、他社に先駆けて賢い家庭用ロボットを世に送り出す鍵を握る。しかしこの種の力業で資金力に乏しい日本が米欧中と正面から衝突しても勝つのは難しいだろう。

 ドラえもんは日本で最も有名なロボットの一つだ。ネコ型を称するが、形状、歩き方を見れば、明らかなヒト型である。どこでもドアやタイムマシンを出す四次元ポケットはさておき、まもなくドラえもんのようなヒト型ロボットが家の中を闊歩する光景が、少なくとも米欧中では当たり前になる。ドラえもんを創造した国は挽回できるだろうか。

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◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2025年の論点100』に掲載されています。