2024年1月、日本の月探査機SLIMが月面に着陸することに成功した。世界では5番目となる月面着陸であるが、日本としては初めての月面着陸となる。

 1969年、アポロ11号が月面着陸を果たし、人類は地球以外の天体に初めて足を踏み入れた。しかしそれから半世紀以上にわたって、人類は月へと向かうことがなかった。これは、月に向かうためには膨大な資金が必要で、それを国家として支出するのが困難であったことが最大の要因である。

再び動き出した世界各国の月探査

 アポロ計画はアメリカがソ連に対抗し、核兵器の輸送手段としてのロケット技術を誇示する側面が大きかった。月面に人類が降り立ち、宇宙競争に勝ったことで、その最大の目的が達成されてしまい、それ以上国家予算をつぎ込む理由が失われてしまったのである。

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 また、アポロ計画による探査で、月には水が乏しく、人間が居住するためには過酷な環境であることも明らかになった。地球から水を持っていかない限り、人類の滞在は不可能と考えられたのである。

写真はイメージ ©AFLO

 この風向きが変わったのは1990年代である。アメリカの小型月探査機2機が月探査を実施した結果、月に水(氷)が存在する可能性が高いことが見出されたのである。水は、アポロ計画では探査されなかった月の両極地域、とりわけ南極地域に多いことも明らかとなってきた。

 さらに、宇宙開発技術が進歩し、小型で高性能な宇宙輸送手段が次々に実用化され、宇宙への輸送コストが低減されてきた。このような機運から、21世紀に入り、世界各国が月探査に乗り出すようになってきた。ヨーロッパが2003年に「スマート1」、中国が2007年「嫦娥(じようが)1号」、インドが2008年に「チャンドラヤーン1」を打ち上げた。その中で日本は2007年に月周回衛星「かぐや」を打ち上げ、アポロ計画以来となる大型の月周回探査を実施した。