2010年代となると、月探査は周回探査から着陸・ローバー(月面を走行できる車)探査へと移行する。そして、中国がこの分野で一歩抜け出す形となる。2013年には嫦娥3号で中国は旧ソ連・アメリカに次ぐ世界で3番目の月着陸国となり、またローバーの走行にも成功した。2019年には嫦娥4号を月の裏側に着陸させることにも成功している。
「人類の滞在」を目指す国際共同探査
このような中、2017年にアメリカが打ち出した有人月探査計画が「アルテミス計画」である。この計画は人類を再び月面に降り立たせるものであり、合計3回の飛行により、人類の月着陸を実現させる。
ただしアポロ計画と異なる点としては、単に月面に人類を送るだけではなく、継続して人類を月面に送ること、そして人類を月面に滞在させることを目標としていることである。
アルテミス計画は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発した新たなロケットである「宇宙輸送システム」(SLS)と、同じく新たに開発した宇宙船「オリオン」を使用する。新規性が高いため、まず無人の打ち上げが2022年11月に実施され、無事成功した。
今後は、2025年9月に2回目として有人打ち上げが計画されている。4名の宇宙飛行士が月を周回し地球に戻ることになる。そして、2026年9月の3回目の打ち上げにより、再び人類が月面に降り立つことになる予定である。
アルテミス計画は国際共同探査として進められており、日本も重要な役割を担っている。2028年以降、日本人宇宙飛行士2名が月面に降り立つことが政府間の覚書として締結されたほか、日本からは宇宙航空研究開発機構とトヨタ自動車などが開発している有人与圧ローバーが本計画のために提供される。