漫画と文章を交えながら、認知症の家族を持つ漫画家が専門家の手引きのもと「認知症とはなんぞや」を学ぶ様子を描き、9万7千部のヒットを記録した『マンガ 認知症』(ちくま新書/ニコ・ニコルソン、佐藤眞一著)。今年9月、その続編にあたる『マンガ認知症【施設介護編】』(ちくま新書/ニコ・ニコルソン、佐藤眞一、小島美里著)が刊行された。
上記二作の編集を担当した藤岡美玲氏に、刊行の経緯とその魅力を語っていただいた。
施設入所で、ハッピーエンドに終わるはずが…
著者のニコルソンさんの祖母が介護施設に入ることになり、介護疲れから悪化していた家族関係も改善する――そんなハッピーエンドで終わった『マンガ 認知症』。しかし、実際にはその先にも苦労があったことが、『マンガ認知症【施設介護編】』の刊行につながったという。
「おばあさんが入所された後も、施設でのおばあさんの転倒が絶えない、費用がかさんでしまって困っている、などといった悩みをニコさんから聞いていました。そこで、『認知症患者にはどんな施設が合うのか』という、多くの家族が悩んでいるであろう問題にフォーカスした続編を作ることになったんです」
前著のヒットには、ニコルソンさんが家族として強い当事者意識を持っていたことに加え、ニコルソンさんの漫画家としての経歴も関わっていたのではないか、と藤岡氏は分析する。
「『マンガ 認知症』では、読者が感情移入しやすい認知症の家族たちがいて、一見内心が分かりづらい認知症患者がいて、さらに専門的な知識を持っている専門家が登場します。そして、作中では彼らの心のすれ違いが大きな問題となります。
一般的なハウツー漫画は、登場人物のセリフや効果音以外の言葉が少ない、いわゆる青年漫画の文法の延長線上にあることが多いんですが、ニコさんは女性向け漫画出身の方。
登場人物が心の中でつぶやく言葉や、著者から登場人物に対してのツッコミなど、複雑な言葉のレイヤーを作ることに慣れていらっしゃる。それが認知症というトピックを扱う上で、うまくハマったのではないかと」