マライ 旧東ドイツの経済状況は厳しくて、東西ドイツの経済格差が、ますます大きくなっています。
斎藤 ハンブルクとドイツ東部の都市とでは、1人当たりGDPで2~3割は差があります。旧東ドイツでは就職先も少なく、若い人がどんどん西に出て行ってしまうので、高齢化と人手不足も深刻です。将来への不安を抱える中、ウクライナ戦争まで勃発して、ガス代や電気代が高騰し、ますます生活が苦しくなる。「自分たちは政府に見捨てられた」と感じている人は少なくありません。
極右政党が州議会で第一党に
マライ 積もりに積もった不満の矛先が、いまウクライナをはじめとする難民に向けられていますよ。ドイツ全体の国民感情としては、ウクライナを支援したい気持ちが強いと思うのですが、戦争が予想よりも長期化したことで、「難民支援に多額の税金が使われてしまい、自分たちの生活は一向によくならない」といった不満が、東部では特に高まっています。
それが如実に表れたのが、2024年9月に行われた東部のテューリンゲン州とザクセン州の州議会選挙でした。反移民・難民を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が、テューリンゲン州で第一党になり、ザクセン州でも1位に僅差の2位。極右政党が第一党になるのは、戦後初めてです。
斎藤 一方で、環境保護、平和などを掲げた「緑の党」の失速ぶりがひどい。テューリンゲン州、同じく東部のブランデンブルク州の州議会選挙では、全議席を失っています。
ただ、排外主義派の言うことには、デマもかなり含まれていると思います。私の子どもが現地の小学校に入る前、「学校は移民や難民だらけで、授業が成り立たないくらい。だから、あなたの子どもがドイツ語を話せなくても大丈夫」と言われました。ところが実際に入学してみると、ウクライナの難民やアフリカ系移民の子は一人もいないという……。
マライ そういうデマが真実味をもって語られてしまうほど、社会への不満や不安が大きくなっている。
本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「混迷するドイツ、リベラル派の罪」)。全文では、ドイツ東部を見下している西部リベラル派の現状、リベラル派が招くポピュリズムの問題、ドイツでベストセラーになっている意外な日本人著者の書籍などについて語られています。
混迷するドイツ、リベラル派の罪