今年のDeNA戦はハマスタ開催だった。交流戦に入ってまわりのファイターズファンの間で「ハマスタのチケット取れない」が合言葉のようになっていた。DeNA、上げ潮に乗ってるなぁ。上のほうの座席から見渡して「横浜ブルー」一色に染まったスタジアムは壮観だった。
活気がある。客層若い。女子多い。文春野球コラムのコミッショナー、村瀬秀信さん(言わずとしれたDeNAファン)に言わせると「球場に行けるのは、チケット争奪戦を生き残った気概のある元気者しかいない気がします。ほんと取れないですよ」とのこと。
ひと昔前とすっかり様変わりだ。以前は空席が多くて、隣りのイスにかばんを置いてくつろぐくらいの余裕(?)があった。僕は交流戦がらみでなくても好んでハマスタへ出かけた。ベイスターズは今みたいに人気がなく、どうかすると殺伐としたヤジが飛んだ。順位も低迷していた。それでも球場にチームを見捨てられないファンが大勢いた。僕はそこにいるのが心地よかったのだ。
大切な記憶の主人公を応援したくて
もちろんファイターズファンだから森本稀哲やスレッジを応援する。ヒチョリは何年たってもどこに移籍しても「06年パ・プレーオフ第2ステージ最終戦、決勝点のホームにすべり込んだヒーロー」だし、スレッジは「09年CS第2ステージ初戦、逆転サヨナラ満塁ホームランを放ったヒーロー」だ。球団史を塗り替えてくれた男たち。大切な記憶の主人公だ。どちらも人目をはばからず号泣したのだ。こう自分というものと切っても切れないというか、自分そのものであるような思い出。
だけど、ヒチョリもスレッジも(当たり前だが)ベイスターズのユニホームで頑張っていた。ヒチョリなんか黄色のリストバンドだ。ファイターズファン的に言うと「本来は緑のリストバンドのはずなのに無理して黄色なんかつけちゃって」という勝手な見え方だった。僕はいつも仮面ライダーに登場した「ニセ仮面ライダー」(マフラーの色が違う)を連想したものだ。
だからハマスタの夜はいつもしんみりしていた。大好きな選手に再会できて幸福だ。その試合で活躍してくれたりしたら大喜び。だけど、ほんの少し悲しい。ほんの少し寂しい。
あぁ、ヒチョリもスレッジも遠くなっちゃったんだなぁと思うのだ。選手として頑張ってもらいたい気持ちにウソはないけど、もう自分の切実な何かと(06年や09年のように)歯車がピタッと重なることはないだろうと感じている。幸福だけど寂しい。その混じり合う感情のなかでぐずぐずしていたくて、好んでハマスタへ出かけた。
と書いてきてヒチョリに関しては別のニュアンスもあるなと思った。僕は「焼肉 絵理花」の常連で、森本家とは家族ぐるみのつき合いがある。ベイスターズへ移籍して最初なかなか結果が出ず、親戚みたいな気持ちでヤキモキしていたのだった。いや、正直言うとケガがちで試合に出られないことが多くて、ベイスターズ在籍中はずっとヤキモキしていた。