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日本円はリスクだらけ

 だとしたら、34年ぶりに最高値を更新した日本株のインデックスファンド(日経平均やTOPIX)に積立投資すればいいのだろうか。だが、「日本人なら日本株に投資するのが安全」という常識は、日本円の為替リスクを考慮していない。

 1ドル=150円を超える円安が続いているが、これは円の購買力が弱くなっていることを意味する。ドル建てで100ドルの商品は、これまでなら1万円で買えたが、いまでは1万5000円出さないと売ってもらえない。その結果、エネルギーなどの輸入価格が上昇し、それが国内の商品・サービス価格に転嫁されて物価が上がっている。

 だがこのとき、資産のすべてをドルでもっていたらどうなるだろう。かつての100ドルは1万円相当だったが、いまでは1万5000円相当の価値がある。円建ての物価が上がっても、ドル払いならかえって割安になるからこそ、「安いニッポン」に世界中から観光客が殺到しているのだ。

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 ほとんどの日本人は、日本に暮らして、日本企業で働いて、日本円で銀行預金している。さらにはマイホームとして日本の不動産を所有しているのだから、日本円に対するリスクが過剰で、大幅な円安になればインフレで大きな損失を被ってしまう。そう考えれば、日本人が日本株に投資してさらに日本円のリスクを増やす合理的な理由はない。

 こうした観点からよくできているのは、「MSCIコクサイ・インデックス」に連動する投資信託だ。日本株を除く海外先進国の株式に分散投資する商品で、かつては日本の証券会社を通じて海外に分散投資する定番商品だった(ちなみに過去10年間の運用収益は年率13%台)。

「オルカン」の愛称で知られる「eMAXIS Slim 全世界株式」は、先進国だけでなく中国、インドなど新興国を含むMSCIオールカントリー・ワールド・インデックス(ACWI)に連動した投資信託だ(ここには日本株も含まれる)。

 世界市場の代替としてアメリカ株に投資してもいい。定番はS&P500インデックスに連動したファンドで、“投資の神様”ウォーレン・バフェットも、(自分が運営するファンドを除けば)個人投資家はアクティブファンドやヘッジファンドに手を出さず、手数料率の安いS&P500のインデックスファンドに長期投資すべきだと説いている。

“投資の神様” ウォーレン・バフェット氏 ©共同通信社

 テクノロジーがこれからの世界を変えていくと考えるなら、ハイテク銘柄が集まるNASDAQ市場のインデックス(NASDAQ100)に連動するファンドがいいだろう。これならGAFAやテスラはもちろん、エヌビディアのような生成AI関連銘柄にも投資できる。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「臆病者のための新NISA活用術」)。記事全文(9,000字)では、さらに下記のテーマについて深堀りしています。

 「老後」を短くすればいい
 ・月3万円で1億6300万円
 ・NISA以外は意味がない
 ・余裕資金はすべてNISAに

 ・不動産投資はこう考えろ

 ・成長投資枠は無視してよい

 ・株価の上昇・下落を気にしない

 

「文藝春秋 電子版」(初月300円から)では下記の記事が読み放題です。

・「インフレに克つ 臆病者の資産防衛術」橘玲
・「臆病者のための『新NISA活用術』」橘玲
・「臆病者のための『資産防衛術』」橘玲
・「教育無償化は税金のムダ使いだ」橘玲
・「橘玲のイーロン・マスク論」橘玲