台北駅周辺に急増する「若いホームレス」
「近年、台北で若いホームレスが急増しています」
そう語るのは、映画化もされた小説『做工的人』(ブルーカラー)など、労働問題を中心とした著作のある台湾人ジャーナリスト・林立青氏だ。自ら「友洗社創」という企業を設立し、ホームレス、更生者、非行少年らに清掃の仕事を提供する活動も行っている。
林氏によると、若年化の傾向はコロナ禍から始まり、収束したいまもなお続いているという。
「コロナで感染拡大を防ぐために外出が制限され、その影響で日雇いや不安定な仕事で生計を立てていた低技術層の若者が多く街頭に出ざるを得なくなったのです。コロナ禍の後も、偽ショッピングサイトで買い物をしてオンライン詐欺に巻き込まれるなどして、経済的に困窮した結果、路上生活に追い込まれる人も増えました」
筆者も実際に台北駅周辺などを歩いてみた。確かにこれまでは50~70代が中心だったのが、明らかに若者と思えるホームレスを見るようになった。
台北でホームレスが集まる場所は主に台北駅の南二門外広場と万華区にある龍山寺前の艋舺公園だ。それぞれ100人程度が屋根のある高架橋下などに寝泊まりし、日中は仕事を探しに出かけるという。彼らは夜になるとシートが敷いてある自分の居場所に戻り、思い思いに静かに眠る。若者と思しきホームレスは、無精髭に疲れた表情をして段ボールに横たわっていた。
「半導体バブル」は一部だけ
しかし、台北の若者の困窮の原因はそれだけではない。コロナ禍で弱った若者の懐に、昨今の物価の上昇や家賃の高さが追い打ちをかけているという。