「はい、こども電話そうだん室です。こんにちは」
「あの……ママが」
「ママがどうしたの?」
「ママが……ずっとげんきがないんです」
「ママ、具合が悪いの?」
「ううん、げんきだけど、げんきがないの」
「そうなのか。きみは何歳かな?」
「5さい。もうすぐ6さいになります」
「えらいな。ママのことが心配なんだね」
「うん、だってもうずっとわらってないんだ、ママ」
「いつもは笑ってるのかな?」
「うん。ママはぼくがピーマンたべたときと、あと……」
「あと?」
「くらもとがヒットをうつとわらいます」
「くらもと?」
「ベイスターズのせんしゅです」
「ママは野球がすきなんだね」
「うん。ママはベイスターズのくらもとせんしゅがすきなの。だからぼくもくらもとせんしゅがすき」
「そうか。おじさんも野球がすきだよ。どこのチームがすきというのではないけどね」
「ママはいつもピーマンがはいったオムライスにケチャップで『5』ってかくの。『ピーマンがたべられるおまじないだよ』って」
「美味しそうだ」
「でもママはもう『5』ってかいてくれないんだ。かっとばせ~みせろおとこいき~のうたもうたわないの」
ママが元気になるために
「きみは、どうしたらママが元気になると思う?」
「ぼくもっとピーマンたべるよ」
「そうだね。ピーマンはからだにいいよ。きみが大きくなるのに大切な食べ物だ」
「でも、ぼくがピーマンをたべるだけじゃダメなんだ」
「倉本選手はヒットを打ってないの?」
「ママはいつもテレビのまえで『くらもと~~がんばれ~~』っていうの」
「うん」
「だけどママ、いまテレビをみても『くらもと~~』っていわないの。テレビにくらもとがでないの」
「そうか」
「テレビのまえでいっしょうけんめいおおきなこえをだしたら、くらもとせんしゅにきこえますか?」
「そうだね。聞こえると思う」
「ぼくおおきなこえでがんばれっていいます」
「それはね、『応援』っていうんだよ」
「おうえん」
「おじさんもね、昔少しだけ野球をやっていたことがあるんだ」
「わあすごい。くらもとだ!」
「バッターボックスに立つとね、『がんばれー』って声が聞こえてくる。でもそれがつらいときもあった」
「おうえんが?」
「いつでもヒットを打ちたいけど、打てないときもあるんだ。『がんばれ~』って言われているのに、がんばれないときもある」
「あ、ぼくも」
「どうしたの?」