もうすぐ雨の季節ですね。屋根の付いていない横浜スタジアムは、強い雨が降ると試合が中止になります。これからの季節はそういうことも増えるでしょうから、雨が降っても野球を楽しめるように、今日は雨の話をしましょう。

 雨の中の試合、と聞いて真っ先に思い出すのは、昨年のクライマックスシリーズ。DeNA対阪神戦。泥だらけになっても、表情一つ変えずに相手ピッチャーと対峙する筒香の覇気から、勇気をもらったDeNAファンも多いはずです。読者の方においては、「雨の試合」と聞いて、何を思い出すでしょうか。

プロ野球選手は「雨」に詳しい?

 グラウンドでプレーする選手にとって、「雨」の情報ほど気になるものはありません。中止になるかもしれないという状況は、集中力を高める上でどうしても余計な情報となります。というのも、多くの野球選手は、雨が降ることによってなんらかの恩恵を受けてきたからです。

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 学生時代、雨が降ると多くの場合練習メニューが変わります。室内練習場が完備しているチームでさえ、部員全員が練習をすることはできませんから、なんらかの形で分かれて練習することになります。早い話、雨が降ると練習が楽になるんですね。雨が降ると練習自体がなくなる、というチームもあります。雨が降るかどうか微妙な天気予報の日の早朝に、こっそりグラウンドに水をまいて強制的に中止にさせようとする、なんて話は意外とあるあるだったりします。午後の授業中に雲行きが怪しくなってくると、妙にテンションが上がってくるという現象もほぼ全ての野球選手が体験していることでしょう。各高校に、「雨乞い」の儀式が伝統的に伝わっており、プロに入るとそれぞれの高校の雨乞いを披露し合いました。それくらい、「雨」が降ることは野球選手にとって重要な話なのです。(ちなみに、私のお気に入りは横浜高校の雨乞いです)

 私はプロ野球のほぼ全てを二軍で過ごしましたから、ドーム球場で試合をすることはほぼないと言ってもいいでしょう。だからこそ、二軍選手にとって雨の情報は余計に重要です。10年前は今ほどスマホが普及していませんでしたから、天気予報をリアルタイムで更新できるデバイスがありませんでした。だから、どうにかして誰かが携帯電話で雨雲レーダーの最新情報を獲得し、それを全員で共有し、今日は試合をやるのかやらないのか、あれこれ思慮をめぐらせ、結局何もわからずに、最終的には雨乞いをし始めるのです。雨が降りそうな日、「俺たちって、たぶん気象予報士の次に雨雲レーダー見てるよな」と誰かが言ったのを、とてもよく覚えています。

現役時代の筆者・高森勇旗(左から2番目)

 二軍にいると、試合前の練習で雨が降っている場合、中止が決定すると横須賀に戻って練習をしますが、中止になるかならないかの場合、相手チームの室内練習場を借りて練習をします。イースタン・リーグの場合、ジャイアンツや日本ハムのように、施設内に立派な室内練習場を持つチームから、ヤクルトのように、寮の1階にあるバッティングゲージを使うものまで、様々です。