もうひとつ注意すべき新たな犯罪のスタイルとは
こういった古典的犯罪が社会に根を張り続ける一方、新たな犯罪のスタイルが言わずと知れた特殊詐欺(オレオレ詐欺)であり、匿名・流通型犯罪(俗語で「トクリュウ」とも)だ。結論めいた事を言ってしまうと経済犯罪は「アマチュアとプロの二極化」の方向へ行くと見るべきだろう。
いわゆる「ルフィ事件」がアマチュア化の最たる例だ。
「ルフィ事件」は主犯格とされている今村磨人被告、渡辺優樹被告らが特殊詐欺をはたらいていたが、連続広域強盗事件も起こしていた。その中で残虐という意味で特筆すべきは狛江市強盗致死事件だ。通信アプリ「テレグラム」で指示された「ルフィ強盗団」が90歳の女性を殴打の末、死に至らしめた。犯行には当時19歳の大学生も加わっていた。アマチュア化の典型と言えるだろう。地面師のようなプロの犯罪とは真逆の、稚拙であり無計画な犯行だ。
プロの経済犯罪で言えば地面師の他、オレオレ詐欺の元祖ともいわれる五菱会事件が思いつく。SNS詐欺やロマンス詐欺など総称して言うところの特殊詐欺は、オレオレ詐欺から始まったと言ってよい。1990年代後半から2000年代前半にかけて梶山グループ(別名、カジック)と言われた巨大な詐欺グループが存在した。元山口組美尾組(のちに五菱会、現・清水一家)の組員だった人間がトップになり、オレオレ詐欺が始まったと言われている。
オレオレ詐欺は2000年代前半に隆盛を見せた。2011年に全国に暴力団排除条例が施行されたのを契機に、それまで暴力団が手を出してこなかったオレオレ詐欺もシノギと化していった。銀行通帳、運転免許証さえ作れず、生活することが困難になったヤクザは手段を選ばなかった訳だ。